前回に引き続き、予算や人員に限りのある中小旅館・ホテルでもできる滞在中サービスの魅力アップ策を紹介しよう。旅館・ホテルの滞在中の満足度は、チェックイン後や夕食後に提供される館内外のサービスで一層高めることができる。
中小規模の館は、料理にこだわりをもつ傾向にあるが、必ずしも食材原価に比例して夕・朝食の顧客満足度が上がるとは限らない。むしろ、食材原価を適度に抑制して、滞在中サービスや客室リニューアルのための資金に充当した方が良いケースもある。
例えば、宿泊単価が1泊2食で1人3万円、食材原価が9千円の館を想定してみよう。売り上げに対する食材原価は30%に及び、人件費や諸経費を控除すると利益を残すことは難しい。業界の相場を考えると、メニューを根本的に見直して6千円程度に抑えるよう料理長へ依頼するのが望ましい判断だが、リピート客がいると館の都合で一方的に経費削減をするのを躊躇(ちゅうちょ)しがちだ。
このようなケースでは、お客さまへ投下する経費の総額は変えずに、より高い顧客満足が期待できる施策が取り組みしやすいだろう。例えば、料理原価を1人3千円削減する代わりに千円を館内の料飲サービスへ、千円をアクティビティへ、残り千円を施設リニューアルのための資金とするのだ。
料飲サービスの充実のために1人千円の予算があれば、レストランや客室冷蔵庫のドリンクや夜食などの無償提供を行うことができる。一部の高級業態で実施しているオールインクルーシブのサービスに近いものを取り入れることが可能となる。
アクティビティの充実のために1人千円の予算があれば、案内スタッフを配置して地域の魅力にあふれた思い出深い体験を提供することができるだろう。例えば山間やリゾート地の館であれば星空体験や野生動物ウオッチングに連れて行っても良い。天体望遠鏡を用意すれば、より個性を出すことができる。
現状支出している料理原価、諸経費が顧客満足度の向上に最適なバランスで活用されているか総点検してみよう。もし経費をかけている割にお客さまが満足していないということであれば支出配分を変えてみることをおすすめする。
(アルファコンサルティング代表取締役)