【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 501】2020年に持続的成長するための指針2 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回に引き続き、変調が懸念される2020年においても持続的成長するためのポイントを紹介しよう。19年はインバウンドの減速基調、客室の供給過多による足元の稼働率低下、金融機関の態度硬化が見られるようになった。変化に対応できず足をすくわれないよう気を付けたい。

 3、業態の垣根低下に積極的に順応する

 この数年で供給過多を見越したホテル業界が、ライフスタイルホテルのように特徴的なコンセプトで差別化を狙った施設を開業するようになった。その中には、日本旅館が得意としてきた和風のコンセプトや地域色、ユニークな滞在体験を売りにしているケースもある。

 日本旅館とホテルは区分が一層曖昧となり、ますます競合するようになっている。顧客の視点から比較検討される可能性のある競合施設は絶えずチェックして差別化を図ることをお勧めする。

 また、顧客に支持されているサービスや設備は業態に関係なく、積極的に取り入れたい。ライフスタイルホテルを参考にパブリックスペースの活用法を検討するというのでも良い。宿泊業は消費者の嗜好や生活スタイルの変化の影響を受けやすい。市場調査会社が提供するレポートやwebアンケート調査システム等を活用して意思決定に役立てたい。

 4、現金を多く持ち手元流動性を高めておく

 旅館・ホテル業は固定費率(売上高に対する固定費の割合)が高い業種であるため、宿泊単価や稼働率が向上すると多くの利益を残すことができる。この数年のインバウンドブームにより急激に入り込みが増加したエリアでは、得られた利益を原資に増改築が盛んに行われた。

 しかし、一部では節税を名目に経費を使いすぎたり、銀行からお金を借りすぎたりという負の側面も見られるようになった。

 19年後半には貿易摩擦により観光客が急減、資金繰りに支障をきたすケースが出てくるようになっている。

 20年も地域によっては予見できない問題が発生して、当初見込み通りの売り上げが得られない可能性がある。銀行からお金を借りる時は返済期間を可能な限り長期として、月々の返済額を抑えるようにしよう。また、経費支出は費用対効果をよく吟味して手元現金を減らさないよう気を付けたい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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