【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 522】アフターコロナ時代に取り組むべき施策4 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回に引き続き、アフターコロナ時代に取り組むべき施策について紹介しよう。新型コロナウイルスの感染抑制を目的とした強烈な自粛要請や衛生指導は、消費者の生活様式や価値観、嗜好を大きく変えてしまった。従前のコンセプトや運営方針、商品サービス、ハード設備では宿泊者の満足が得られない可能性がある。早めに対策を講じて良いスタートを切りたい。

 9、優秀な人材の引き留め策を行う

 売り上げの落ち込みが長期化する中、全国の施設で解雇や雇い止めが相次いでいる。より深刻な問題は自己都合退職の増加である。

 当初は、休業手当だけでは生活費が賄えない一般スタッフやパート・アルバイトが転職するケースが多かった。最近では、将来を案じた幹部スタッフが転職を検討するケースが増えてきている。このようなスタッフが次に探すのは異業種の会社だ。この状況が続くと優秀な人材が旅館・ホテル業界を去ってしまう。人材引き留めが喫緊の課題だ。

 引き留め効果が高いのは、会社の業績や待遇を新型コロナ流行前の状態に戻すことだが容易ではない。Go Toキャンペーンの延期により夏休みシーズンに反転攻勢に出るチャンスも失ってしまった。完全に集客が戻るのは1年以上先だろう。

 正常化までに時間がかかることをスタッフに理解してもらいつつ、将来に希望をもちながら働けるよう施策を立案・実行したい。例えば、お客さまが安心して楽しめるプランや周辺観光の企画である。衛生対策ばかり議論するのではなく、お客さまが可能な限り自然な形で観光を楽しんでもらえるようスタッフで話し合って準備すると良いだろう。

 また、社長や女将が新しい将来ビジョンを示すのも良い。この施設を必ず復活させ、新型コロナ流行前よりも素晴らしい館にすると決意表明すれば、スタッフの士気も高まるに違いない。

 個別面談も有効だ。自分の将来に不安をもつスタッフは多い。長い歴史の中で幾多の困難を乗り越えてきた話を経営者自らすれば共感してもらえるだろう。今度は自分が復活の力になりたいと買って出てくれるスタッフがいることを期待したい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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