前回コラムに引き続き、新型コロナウイルスの影響が続く中で銀行向けの事業計画を策定する方法を紹介しよう。お盆休みの週は多忙を極めた旅館・ホテルが多かったが、夏休み以降の業績見通しが立たないという声も聞く。継続的な資金繰り支援を受けられるよう万全な対応をしたい。
8、リーマンショック時の金融対応に学ぶ
新型コロナ対応の緊急融資制度は多くの施設が活用しているが、数年後の返済開始を不安に感じる経営者は少なくない。既存債務を返済するだけでも苦労していたのに、新たな借り入れの返済が重くのしかかるからだ。
政府の追加支援策が見えない中、今後の見通しを予想するには、リーマンショックの時の政府の対応を参考にすると良い。
リーマンショックの時には、国内企業の業績悪化を受けて、平成21年12月に金融円滑化法が施行された。施行して半年で総申し込み件数は約47万件に達し、実行率も98.3%と申し込めばほとんど全ての企業が返済条件の変更を受けることができた。その代わりに、返済条件の変更を行った企業は1年以内に経営改善計画を策定することが求められた。
新型コロナの流行に伴う業績悪化は、企業側に直接の責任はない。経営責任や株主責任を問うような経営改善計画を提出する必要はないだろうが、制度融資の返済を円滑に開始するための地ならしとして、事業計画の提出を求めてくる可能性は高いといえる。
当初の借り入れ条件通りに返済できれば特段問題ないが、据え置き期間を過ぎても返済開始できない場合には、再生のための猶予期間が設定される可能性がある。21年に施行された金融円滑化法は25年に期限切れしたが、その後も暫定的な計画を提出すれば3年程度の返済猶予(暫定リスケ)を認めてもらうことができた。
ただし、暫定リスケとは言葉の通り、一時的な猶予期間に過ぎなかった。暫定計画で定めた3年間が過ぎると、自力再生(正常化、超長期での返済)や債権放棄(第二会社方式、直接放棄)、債務の劣後化、他社やファンドへの売却、廃業の選択を迫られることになった。
今回のコロナ対応融資においても、企業ごとに債務整理策を見極めるルールが導入されることになるだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)