【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 545】ポストコロナ時代のM&A戦略4 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回に引き続き、ポストコロナウイルス時代のM&A戦略について最新の情勢を踏まえながら説明したい。新型コロナの流行は旅館・ホテルの運営の在り方だけではなく、M&A取引(合併・買収)にも大きな影響を与えている。業界の先行き不透明感や資金繰り問題から売却を急ぐオーナーが増えている一方で、新型コロナによる混乱を商機ととらえて積極的に買収を仕掛ける資本家もいる。

 4、コロナ禍における円滑な旅館・ホテル売却法

 新型コロナの影響により施設を売却したいという話は増えているが、売り主の希望通りの条件で売却できるケースは少ない。譲渡価格、不動産評価の根拠となる将来キャッシュフローが見通せなくなっているからだ。銀行からの借り入れが大きい場合、借入残高以下で売却すると借入金が残ってしまうため安易な値引きに応じることができない。このような場合は売り急ぐことをせずに、運営しながら時間をかけて売却先を探そう。

 自社で運営を継続するのが難しい場合には、運営委託業者(オペレーター)を探すことをお勧めする。適切な委託先は皆さまの施設の規模や業態により異なる。収益が安定しやすい都市部や著名リゾート地であれば賃貸で引き受けてくれる業者を見つけやすいが、そうでない場合はマネジメント契約(MC)や運営委託も条件に入れて探すと良い。

 オペレーターのついている旅館・ホテルの不動産は売却しやすくなる。収益や利回りの計算がしやすいため、宿泊業者だけでなく異業種からの新規参入希望者、投資家も売却先として対象となるからだ。

 築浅(ちくあさ)にも関わらず休館となっている場合は営業再開できるよう努めよう。休館のままで売却するよりも営業再開した方が売却価格を高く設定しやすいからだ。築深の施設は正攻法で売却することは難しい。担保価値がなく、買い手が購入資金を銀行から調達できないからだ。将来、取り壊しなどの撤退費用の捻出に困らないように試算しておくと良い。

 将来の売却先として施設運営を任せているオペレーターに購入してもらうのも一手段である。はじめは財務体力がないため購入資金の準備はできないが、実績がついてくれば銀行から資金調達することも可能となり、有力な買い手候補者になるだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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