前回に引き続き、ポストコロナ時代のM&A(合併・買収)戦略について最新の情勢を踏まえながら説明したい。新型コロナウイルスの流行は旅館・ホテルの運営の在り方だけではなく、M&A取引にも大きな影響を与えている。業界の先行き不透明感や資金繰り問題から売却を急ぐオーナーが増えている一方で、新型コロナによる混乱を商機ととらえて積極的に買収を仕掛ける資本家もいる。
5、M&A購入資金の借り入れ
運営能力のある旅館・ホテルにとって、ポストコロナ時代は事業拡大の絶好のチャンスとなるが、課題となるのが資金調達だ。銀行担当者の中には観光業の先行き見通しについて不安を持っている人が少なくない。
せっかく良い話が持ち込まれても、購入資金が調達できないために交渉が破談することが多くなるだろう。ホテル建設ラッシュに沸いていた時期と比べて、資金調達が難しくなっていることに注意したい。
円滑に資金調達するための対策としてもっとも有効なのが、日頃から取引銀行に対して良い話があれば紹介してほしいと打診しておくことだ。銀行は取引先の信用情報をつかみやすい立場にある。また、貸出収益が減少する中でM&A仲介ビジネス等に力を入れている。資金調達の後ろ盾があるという意味で魅力的である。銀行からの紹介案件は高値つかみさせられることもあるのでしっかりと選別したい。
次に有効なのが、事業計画の策定である。現在運営している施設の財務基盤がしっかりしていても、買収先の施設が黒字化見通しが立たなければ銀行は難色を示すことになる。買収先施設の収支計画を策定した上で、現在運営している施設から営業面、運営面、人材面でどのようなバックアップを行うのか明確に示すことで買収資金を借りやすくなる。
他に有効なのが、法人保証や物上保証である。財務基盤のしっかりとした自社グループ企業が借り入れ返済の保証をしたり、不動産などの担保提供をしたりすることだ。経営の制約を受けるためできればやらない方が良いが、どうしても融資を受けたいということであれば検討しよう。
(アルファコンサルティング代表取締役)