【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 571】休館中に取り組める未来の1歩 6 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、休館中でも取り組める施策を紹介したい。

 新型コロナの再燃により、ゴールデンウイーク明けから休館を余儀なくされている施設は少なくない。いつ終息するのかと気をもむ日々を過ごすのは辛いものである。今のうちからアフターコロナに向けた準備を進めておきたい。

 9、経営資源を生かして新分野へ事業を拡張する

 新型コロナが終息しても、旅館・ホテルの客数が自然と回復して元通りになるわけではない。自粛生活の長期化により消費者の嗜好は大きく変化した。

 エリアや業態、価格帯によって稼働の回復率に大きな差が生まれている。少子高齢化も一層進んでいる。かつて来館してくれた宿泊客が再び訪れてくれるとは限らない。

 待ちの姿勢になることなく、経営資源を生かして新分野へ事業を拡張していこう。

 旅館・ホテルの経験を生かして取り組める新事業は多い。新たな企業成長の原動力になるだけでなく、宿泊業との相乗効果も期待できる。事業再構築補助金など、取り組みを後押しする制度もあるので活用したい。

 新事業を見つけるヒントはいくつかある。

 一つは、自社が得意とする領域、取引先が取り組むビジネス(仕入先、販売先)、経営者の人脈等からアイデアを検討するやり方だ。例えば、鮮魚の取り扱いが得意で、漁師や漁協との関係が深いならば、海鮮マルシェ事業が検討できるだろう。

 海鮮を売りにしている温泉地でも、旅館の売店で扱う土産は加工品ばかりであることが多い。観光客向けの販売だけでなく、卸売りやレストラン事業も取り組めば宿泊以外の収入源につながる。

 もう一つは、成長マーケットから検討するやり方だ。新事業が魅力的か否か、端的に判断する指標として、市場規模の伸び率がある。

 例えば、テレワークやネット通販、惣菜(中食)、フードデリバリー、アウトドア、ウェルネス、健康食等は市場規模が拡大している分野である。成長分野の方が事業の成功確率は高い。

 皆さまの会社で新規事業として取り組み検討している分野があれば、市場規模が伸びているかチェックすると良いだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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