【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 589】コロナ小康期の業績アップ法4 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、コロナ小康期に業績アップに向けて取り組むべきことを紹介したい。感染者数の抑制が続くと、雇用調整助成金や補助金、融資制度が打ち切られることが想定される。そうなる前に業績の正常化を図りたい。

 4、増加する運転資金の確保を行う

 本格的な営業再開に向けて準備をスタートする時期に入ったが、資金不足により思うように進まない旅館・ホテルが増えている。長期間の稼働低迷による資金流出に加えて、想定以上の出費がかさみ資金繰りが厳しい状況に陥っている。

 理由の一つは、補助金制度利用による立替金の増加である。

 観光業の支援や中小企業の事業再構築等を名目に、国や自治体でさまざまな補助金制度が導入された。従来のものと比べて補助上限や補助率でメリットのあるものが多いが、会社側で全額を立て替え払いする必要がある。

 完了報告から数カ月後たってようやく入金されるものが多いため、補助制度を利用すればするほど資金不足に陥るという問題が発生している。

 もう一つは、営業再開に伴う諸経費の増加である。運営体制の正常化を図るために、広告宣伝や人材採用広告、食材・消耗品の仕入れ、システム利用料、清掃の外注費などが増加している。売り上げ獲得よりも先行する支出なので、資金繰りにマイナスとなっている。

 新型コロナ制度融資の返済開始も資金繰りに大きな影響を及ぼしている。年明けには元本の据置期間が終了し、早期に借り入れした施設の返済がスタートする。制度融資は繰延ができず、既存の借り入れよりも優先して弁済しなければならない。もし制度融資を利用しているならば支出が急増する可能性がある。

 資金繰りの見込み違いによる破綻を避けるために、今のうちから精度の高い資金繰り表を作成しておきたい。来年前半のうちに残高不足に陥るようならば、今のうちに融資申し込みをしておきたい。

 日本政策金融公庫のホームページに資金繰り表のテンプレートと作成例があるので、参考にしてほしい(https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_chusho.html)。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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