【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 591】コロナ小康期の業績アップ法6 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、コロナ小康期に業績アップに向けて取り組むべきことを紹介したい。感染者数の抑制が続くと、雇用調整助成金や補助金、融資制度が打ち切られることが想定される。そうなる前に業績の正常化を図りたい。

 6、返済額を調整し資金繰りの対策をうつ

 Go Toトラベルが来年2月ごろに再開される見込みとなり、県民割に続き観光業界の業績改善を後押しする動きが活発化している。その一方で、膨大な借入金を抱え、返済見通しの立たない旅館・ホテルが続出している。商工リサーチの調べによると、宿泊業の月商に対する借入金の割合(借入金月商倍率)は2021年に22.77倍まで急増した。20年は8.45倍だったので、3倍近くの増加となっている。

 例えば、年商が1億2千万円の施設とすると、借入金が8450万円から2億2770万円に増加している計算だ。もちろん20年と21年で平均月商は異なるだろうが、年商を大幅に上回る借入額になっていることは間違いない。

 2億2770万円の借入金を期間15年、金利2%で返済すると仮定すると、月々の返済額は128万円になる。築浅のビジネスホテルの返済額として珍しくはないが、月商1千万円の旅館・ホテルが返済する額としては極めて厳しい水準だ。本格的に返済が再開する前に手を打っておきたい。

 考えられる手段が、あえて借入金を増やして手元資金を潤沢にしておくことだ。据え置き期間の長いコロナ資金を借りておけば、当面の間は資金繰りに困ることはないだろう。資金繰りに気をとられていると、前向きな売上増大策や効率化がおろそかになり悪循環に陥る。

 円滑に融資を受けるコツは短期的な収支予想を厳しめにみた資金繰りを銀行や再生支援協議会に提出することだ。短期での売上回復を前提とした余裕のある資金繰りだと、銀行借り入れにストップをかけられ、自助努力で頑張るよう指導される可能性が高い。

 もう一つの手段が資本性ローンへの組み換えを銀行に打診することだ。承諾を得るための難易度は高いが、借り入れ返済の繰延効果は極めて高い。精緻な事業計画書を求められることが多いので、資料作成にあたっては知り合いの専門家に相談して協力を得ると良いだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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