【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 593】コロナ小康期の業績アップ法8 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、コロナ小康期に業績アップに向けて取り組むべきことを紹介したい。感染者数の抑制が続くと、雇用調整助成金や補助金、融資制度が打ち切られることが想定される。そうなる前に業績の正常化を図りたい。

 8、レベニューマネジメントよりも大胆な差別化に取り組む

 アフターコロナに向けて、レベニューマネジメント(RM)に力を入れたいという旅館からの相談が増えている。RMは宿泊需要を予測し、収益が最大化するよう宿泊料金をコントロールする手法のことをいう。かつては外資系ホテルや国内大手ビジネスホテルを中心に取り組まれてきたが、最近では旅館でも取り組むケースが出始めている。

 RMに関心が高まっている理由は、コロナ禍で乱高下する宿泊料金相場に機敏に対応することで、少しでも稼働率を高めて収益の上積みをしたいという思惑の表れと考えられる。しかし、残念ながら平均稼働率が70%を超えて、週末には満室日が増えるような状況にならないと、RMの効果を十分に得るのは難しい。むしろ、RMを重視すればするほど値下げを助長することになる。県民割などで局地的に稼働率が急回復している地域を除き、競合施設が安売りをしている状況の中でRMを行うと、さらなるダンピングで顧客を奪うという方針になるからだ。

 旅館は、機能面で同質的な競争に陥りやすい西洋型ホテルとは異なる。宿泊者の嗜好や予算は人によって大きく異なり、値下げしたからといって顧客を独り占めできるわけではない。比較的業績が堅調な旅館は、コロナ禍でも旅行しやすい消費者をターゲットとして、他の施設にはないユニークなプランや快適なインテリア、付帯施設を有するという特徴がある。急激な需給バランスの変化が起きやすいコロナ回復期においては、近隣施設の価格をあまり気にしすぎるのは良くない。他施設との違いを消費者がはっきりと認知できる大胆な差別化を行いたい。特に中小旅館は思い切ったターゲットの絞り込みを進めやすいので、補助金等を駆使してチャレンジしてほしい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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