【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 616】お金をかけずにできる生産性向上3 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、お金をかけずに日々の業務を効率化する方法を紹介しよう。観光業でもDXが注目されるようになったが、高額なシステム導入費用がネックとなり取り組みに躊躇(ちゅうちょ)してしまう。予約業務は効率化したが、日々の業務は昔のままで全く効率化が進んでいない施設は少なくない。

 (4)フロントスタッフのすき間時間を有効活用する

 フロントスタッフの待機時間が長くなっていないだろうか? 旅館・ホテルはお客さまが来館するまでの間、客室準備の終わった客室係は待機するという習慣がある。その考え方がフロントスタッフの仕事の進め方にも影響を及ぼしており、手元の仕事がなくただ待っているという施設は少なくない。いわば、すき間時間となっている待機時間を有効活用して売り上げアップやコスト削減につなげたい。都市部であれば、ゴーストキッチンに取り組むことをおすすめする。

 ゴーストキッチンとは、宅配や弁当の提供を中心とする、客席のない飲食店舗のことである。マンションの1室でも開業でき、看板を掲げずに複数の屋号で販売することからゴーストキッチンと言われている。

 旅館・ホテルでは、朝食やチェックアウトの手続きが落ち着いたタイミングから食材の仕込みを始めることになるだろう。夕方以降はフロント業務が忙しくなるので、ランチタイムのみの営業が想定される。

 ゴーストキッチンが利用できるサービスとして有名なのはウーバーイーツであるが、全国で新規参入が相次いでいる。皆さまの施設のあるエリアで対象となっているサービスがないか調べてみると良いだろう。

 リネンの内製化もフロントスタッフの待機時間にできる業務としておすすめする。特に、小規模旅館などリネンの外注単価が高くなりがちな施設は効果が期待できる。具体的には、自社施設内に業務用の洗濯乾燥機を導入し、待機時間にタオル類を自社で洗濯乾燥しお客さまに提供するのである。皆さまの施設でコスト削減が期待できるか計算してみると良い。

 フロントスタッフの勤務体系を夜勤中心のシフトに見直し、朝食提供をフロント部門で行うことも検討したい。旅館だと料飲部門が対応することが多いが、混雑のピーク時間に合わせたシフトとなるため人件費の無駄が大きくなる。都市部の宿泊主体型ホテルのような運営方法となるが、今後の人材難、消費者の価値観の変化を見据えると合理的と言えるだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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