前回に引き続き、お金をかけずに日々の業務を効率化する方法を紹介しよう。観光業でもDXが注目されるようになったが、高額なシステム導入費用がネックとなり取り組みに躊躇(ちゅうちょ)してしまう。予約業務は効率化したが、日々の業務は昔のままで全く効率化が進んでいない施設は少なくない。
(9)清掃の仕上げ方法を変更する
客室や共用部の清掃仕上げ方法によって業務の生産性は大きく異なる。これまでのやり方に固執せず、見直しすることを検討してみよう。
例えば、ベッドの仕上げ方法である。一般的には、マットレスの上にベッドパッドを敷き、その上からメイキングシーツをかけるという方法をとる。このやり方は、見た目は奇麗な仕上げとなるが作業工程が多く、時間と手間がかかることがネックとなる。
この問題を解決する方法として、メイキングシーツをマットレスまでかけず、ベッドパッドを包むやり方がある。清掃時間の短縮やスタッフの負荷軽減につながる。若干カジュアルな印象となるが、本格的な高級ホテルでなければお客さまの印象には影響がないだろう。
同様に、ベッドの上に置く枕やクッション、フットスローについても、単に見た目だけを狙ったものであれば見直しを検討したい。お客さまが利用方法を知らず、客室へ案内した時の初見の印象以上の価値がないケースがあるからだ。靴を脱いであがる客室のベッドにフットスローがあるのは無用の長物である。表層的な模倣に終始せず、真の価値向上に注力したい。
(10)欲しい従業員の年代を顧客ターゲットとする
業界全体では人手不足が大きな問題となっているが、若年層をターゲットとする施設の中には、求人に全く苦労してないというところもある。従業員は労働力であるとともにお客さまでもある。お客さまの立場で見て泊まってみたいという施設は、働いてみたいという施設でもある。
例えば、20代から30代の若手スタッフを採用したいと考えた場合には、その年齢層に好まれるコンセプトの施設に変更するのが手っ取り早い。中年やシニアをターゲットとした施設の方が求人に苦労しがちだ。当然に前者の方が優秀で体力ある人材を確保しやすく、生産性が高くなる。
(アルファコンサルティング代表取締役)