
青木氏
今年の夏は行動制限がなかったことに加え、県民割の利用が行われたことから新型コロナ流行前を超える売り上げとなった施設は少なくない。割引は今後も延長される予定なので、しばらくの間は売り上げの下支えとなるだろう。しかし、この有利な状況が長く続くわけではない。政府の支援措置の打ち切りに備えていく必要がある。中間層をターゲットとしてきた中大型ホテルは需要減少に備えてダウンサイジングを図っていくことをおすすめする。
コロナ前はインバウンドやメディア系のツアーを積極的に獲得し、安価でも部屋を埋めていくことが日々の運転資金を確保していく上で必要なことだった。しかし、薄利多売では設備投資を行うほどの余力は生まれにくく施設の老朽化、陳腐化が進む。固定費が大きいため、コロナ禍のような急変が起きると財務状況は一気に悪化する。
ダウンサイジングに先立って取り組むべきは、棟や客室の選別である。ABCランクに分けて、運営コストやサービスレベル、設備投資の程度、受け入れる客層を色分けしよう。
築浅で眺望が良く、構造上改装工事しやすい棟または客室は、Aランクとして位置付け、高付加価値な客室とするために優先的に改装予算を割り当てる。
ある程度築浅で、表層替えによって商品力の回復が期待できる棟または客室は、Bランクとして位置付け、トレンドに合わせた軽微な表層替えやベッドの導入などを行う。
築深で担保価値がほとんどなく、躯体に問題のある棟は取り壊しを想定する。当面は、訳あり部屋として現況のまま販売を続けるか、従業員の住居として転用する。解体に利用できる補助金を活用して固定費の圧縮を図る。
ダウンサイジングを行い、付加価値の高い客室中心としていけば固定費は低く抑えることができ、ダンピング競争に巻き込まれて利益を落とすこともなくなる。アフターコロナにおいては、高稼働ではなく最適規模の施設を目指したい。
(アルファコンサルティング代表取締役)