前回に引き続き、平凡な施設をいかに魅力的な施設に変えていくかについて説明したい。コンセプトを明確化して差別化を図るというのが良いとされているが、個性のはっきりした施設は少数だ。多くの経営者は、自社の施設は平凡で特色なく集客しにくいと悩んでいる。
地域の資源を活用して差別化する方法は他にもある。地元の農家や漁業者、食品加工業者、菓子店など仕入れで関わりのある人々とのつながりやこだわりをストーリー化するのだ。可能ならば自社サイトで取引農家を写真付きで紹介したり、品書きに記載したりすると良い。
他の旅館・ホテルと取引をしている農家でも構わない。地元の人にとっては、特色ない農家かもしれないが、宿泊客にとっては、その土地のものを体験できる絶好の機会として魅力的に感じてもらえるだろう。
例えば、見た目は同じシイタケであっても、すぐ近くの農家が昔ながらの自然栽培で育てたものを毎日料理に使っているというだけで、ストーリーとして紹介できる。
もちろん、施設運営側にとっては、規格のそろったものを安定的に調達できるJAに頼るのが合理的である。しかし、独自色を出すのを面倒に考え、効率ばかりを追求していては魅力ある施設づくりはおぼつかない。
全国どこでも仕入れ可能な食材で、各地を転々とした板前が同じような調理方法と味付けをした料理はつまらないものだ。消費者にとって過去に食べた経験のある、ありきたりのものだからだ。遠路から訪れたお客さまがわざわざ来て良かったと意義を感じてくれるものではない。
豪華な料理を出せばお客さまが喜んでくれる時代は終わった。ぜいたく品は敬遠され、シンプルな生活が好まれるようになっている。消費者が求めるのはモノの豊かさではなく、未知なる体験や社会や環境に配慮した行動である。
料理はシンプルでも、料理を通じてその地域のストーリーを語ることができれば十分な差別化要素となるだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)