【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 636】インボイス制度の賢い対応法2 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、インボイス制度の賢い対応法について説明しよう。来年10月1日よりインボイス制度が導入される。インボイス制度とは、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式をいう。今回の制度改正は旅館・ホテルの日常業務に大きな影響を与えるものである。また、情報システムの改修も必要となってくる。今のうちから理解を深め準備を進めておこう。

 インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)の登録は、少額の個人利用が売り上げのほとんどを占める小規模施設でなければ、必ず行おう。インボイス発行事業者が発行した請求書や領収書等(適格請求書)でないと、宿泊者は消費税分の控除を受けることができず損をさせることになるからだ。

 私費による宿泊であれば問題ないが、経営者が宿泊する高単価の施設や業務目的で宿泊する施設は、法人経費にするケースが多い。消費税の控除が受けられないと、他の施設に乗り換えられてしまう可能性がある。

 旅行代理店や団体等の法人先と取引している施設は、インボイス発行事業者の登録は必須だ。皆さまの施設が登録していないと、販売先が消費税分を自己負担することになる。事業者登録を取引の条件とする法人先も出てくるだろう。事業者登録の期限は、原則として2023年3月31日までなので、早めに登録しておこう。

 皆さまが仕入先と取引する際は、交通費等の一部の例外取引を除いて、適格請求書を受領して保存しておく必要がある。また、取引ごとに標準税率(10%)、軽減税率(8%)を区分して帳簿に記載(区分経理)しなければならない。このような煩雑な事務作業を敬遠して、仕入れに伴う適格請求書の保存や区分経理が不要となる簡易課税制度を選択する法人が多くなるだろう。

 簡易課税制度は課税売上高5千万円以下の法人が選択できる制度で、宿泊業であれば、課税売上に係る消費税額の50%ないし60%(みなし仕入れ率)を納税すれば良いというものだ(みなし仕入れ率は、泊食分離しているか否かにより異なる)。

 一見便利なものに見えるが、簡易課税制度は観光事業者にとって多額の損失を被るリスクがある。次回コラムでは、このリスクについて説明しよう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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