【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 644】2023年に取り組むべきこと3 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、困難な状況を乗り越え、施設を再興させるために2023年に取り組むべきことを紹介したい。新型コロナが流行を始めてから4年目になろうとしている。全国旅行支援により観光地は活況を取り戻しつつあるが、新型コロナの再燃や政府の政策に翻弄(ほんろう)され道標を見失っている旅館・ホテルは少なくない。

 (3)省人化・省力化を徹底的に進める

 宿泊業を取り巻く採用環境は一層厳しさを増すと見込まれる。大手ホテルチェーンは潤沢な資本を背景に、全国の地方観光地に出店を強化している。ビジネスホテルチェーンも宿泊出張の減少が見込まれることから、観光客向け業態に切り替えを進めている状況にある。旅館・ホテルの棟数は減少傾向にあるが、宿泊業全体の供給客室数は増加傾向にあり、業界全体の求人数は今後も増加すると考えられる。

 一方で、新型コロナに伴う休業等により離職したスタッフが宿泊業界に戻る動きは鈍い。直近の有効求人倍率は3.57倍まで上昇した(2022年11月、接客・給仕の職業)。求人数が増えているなかで、求職者が減少していることが原因だ。知名度や福利厚生の充実により採用活動に有利な大手ホテルチェーンもスタッフ集めに苦労している。

 今年は、採用者数が計画を大幅に下回ることを覚悟して、これまで以上に運営の省人化・省力化を進めたい。最も効果的なのが、料飲部門の省人化である。優れた料理の開発と調理ができる人材の獲得は難しく、また仮に採用できたとしても人件費負担が重い。開発と調理をそれぞれ別の人材に任せると良い。前者は外部の料理専門家やフード企画会社、後者は自社採用のスタッフで対応する。朝食であれば、口コミ評価の高い食事をパートスタッフだけで提供することも可能だ。

 フロントやホール周りの手書き帳票の削減も省力化に有効だ。手書きの帳票を扱おうとすると、作成やチェック、共有に多くの人手を要することになる。今年こそは、スタッフの反対にあっても業務手順を根本から見直し、手書き帳票ゼロを目指したい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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