【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 658】連泊型旅館への転換〈5〉 青木康弘


 前回に引き続き、高単価の連泊客に選ばれる施設になるためのポイントを紹介したい。施設の高付加価値化やインバウンド個人客の集客を進めていくにあたって、今後取り組みを強化したいのが連泊客への対応である。これまで旅館は連泊客の対応を苦手としていた。しかし、旅先での過ごし方が大きく変革するなかで、1泊2食の運営形態に固執しすぎるとお客から選ばれなくなる可能性があるため、今のうちから改革を進めていこう。

 (6)連泊旅行者が好む設備を導入する

 連泊旅行者の好みに合う備品を整備することも平均宿泊日数のアップにつながる。取り組みやすいものとして、まず考えられるのがシアタールームの設置だ。画面サイズはプロジェクターであれば100インチ以上、液晶テレビであれば70インチ以上を選択したい。最近は十数万円程度からと安価に導入できるようになっているので、すぐに投資回収できるだろう。

 ミニキッチンの設置も連泊日数の増加に効果がある。特に、ファミリー層や長期旅行者にとって有用だ。客室内に設置するのであれば、客室のイメージにあったアイランド型のキッチンを導入すると雰囲気を壊すことはない。

 電子レンジや冷蔵庫、調理器具、食器、カトラリーを設置しておくほか、調味料などの貸し出しを行えば、海外のコンドミニアムのような滞在環境を提供することができる。仕込み済みの食材を客室にお持ちし、宿泊者に調理してもらうというプランも提供できるので省人化につながるだろう。

 客室面積が狭ければ、共同のキッチンを設置しても良い。湯治宿では古くからあるものだが、近年は宿泊主体型ホテルやライフスタイル型ホテルでおしゃれな共同キッチンの設置が流行している。

 パーティールームと兼ねた間取りにすれば、貸し切りの際に別途料金を徴収することも可能だ。着席できるスペースまで確保できるならば、訪日外国人観光客向けに料理体験を企画し、追加売り上げの獲得も可能となるだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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