【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 674】立地と戦略〈3〉 青木康弘


 前回に引き続き、施設の立地に応じた戦略の考え方を紹介したい。旅館・ホテルの経営者にとって、「高単価路線を追求していくか、低価格路線に転換するか」「昔ながらのフルサービスの旅館を維持するか、ホテルのようにサービスを省力化するか」「本業に特化するか、多角化するか」は悩みの種である。流行だから、競合他社に負けたくないと安易に方針を決めて取り組むと、予期せぬ失敗に苦労することになる。

 (3)立地とサービス基準の整合性

 旅館・ホテルの経営者として、最上のおもてなしを顧客に提供したいと思うのは当然のことである。長い歴史を持ち、評判の良い旅館では、人手のかかる細やかなサービスが顧客から高く評価されている。他地域の優れた旅館を訪れると、そのサービスを自分の施設でも実践したいと思うだろう。しかし、施設の立地によって、提供できるサービス基準は異なることを理解する必要がある。

 所得水準が高い大都市圏を主なターゲットとしている温泉地は、高待遇を提示することで都会からの優秀な人材を集めることが可能である。腕の良い調理人を招聘(しょうへい)することも不可能ではない。大都市圏へのアクセスが難しい場所で、若者の転出が少ない温泉地も地元の有望な若手を採用しやすい環境にある。人の手を介した、きめ細かいサービスを売りにした施設にできる。

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