前回に引き続き、海外のリサーチをもとに、宿泊業がどのような取り組みを通じて新たなビジネスチャンスをつかむことができるか紹介したい。日本の旅館・ホテル業は、国内の景気や社会情勢の変動に影響を受けやすい厳しい業界であるという印象がある。しかし、外国人から見るとその印象は全く異なるようだ。皆さまの経営戦略検討の参考となれば幸いである。
2、アート市場の潜在的成長力
日本においてアートは、一部の富裕層やコレクターの趣味とみなされがちである。実際に、日本のアート市場は、国の経済規模に比べて相対的に小さいといわれている。一方で、世界全体のアート市場規模は約10兆円に達しており、アメリカが45%、イギリスが18%、中国が17%、フランスが7%、ドイツとスイスがそれぞれ2%を占めている。日本のシェアはわずか1%に過ぎない。これらのデータから、日本人にはなじみが薄いことは明らかであるが、訪日外国人に対しては、アートは有力な訴求テーマの一つと言える。
アートを旅館・ホテル業に組み込む最も簡単な方法はアーティストとの連携だ。旅館オーナーが旅先で購入した統一感のない美術品を並べるだけでは施設の魅力向上にはつながらない。地元出身で施設のターゲット層から支持されるアーティストに、ロビーの絵画や客室デザインを依頼することで、施設の魅力を比較的低コストで向上させることが可能となる。制作を担当したアーティストの人脈やニュース性を利用し、宣伝効果も期待できる。
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