新型コロナに伴う資金繰り対策を目的とした無担保・無利子融資(ゼロゼロ融資)の返済が大きな問題となっている。旅館・ホテル業界では元本弁済の据置期間を長く設定している事業者が多く、まだ一部の返済しか始まっていないが、これから毎月の元本返済額が増えていくと心配する経営者は少なくない。特に、観光庁の補助金や事業再構築補助金を利用した設備投資の自己負担分をコロナ融資でカバーした施設は、これからが返済の正念場となる。
このような事情は、経営者間で話し合うのが難しく、情報が十分に共有されていないと推察される。本コラムを通じて実際に起こっていることを説明したい。今後の金融対応の参考にしていただければ幸いである。
民間の金融機関で大きな問題になっているのが、政府系金融機関や保証協会保証付き貸し出しにおける優先弁済への対応である。新型コロナに関連した特別融資は、既存の借り入れよりも先に返済されるべきという政府の通達があるものの、あくまで一方的な通達であり、すでに貸し出しを行っている金融機関と契約を交わしたものではなかった。
そのため、実際にコロナ関連融資の弁済が始まると、金融機関間で返済の優先順位に関する摩擦が発生するようになった。例えば、毎月100万円元本弁済可能な事業者が、コロナ関連融資の返済に80万円、既存の借り入れ返済に20万円を割り当てるという調整が行われている地域もある。
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