円安によるインバウンドの急増を背景に、著名な観光地や都市部では宿泊料金が大幅に値上げされている。2023年2月以降、旅館の客室稼働率はコロナ前の水準(2013年から2019年の平均)まで回復している。宿泊料金の値上げがスムーズに進むことで、売り上げの大幅な向上が期待される。
多くの旅館・ホテルで値上げが実施・検討されているが、皆さまの施設はどうであろうか。2019年の宿泊料金に対して20%の値上げが実現できれば、それは成功と言えるのだろうか。しかし、現実には、20%の値上げでは諸経費の高騰をカバーできない可能性が高い。
パート・アルバイトの最低賃金は過去10年間で1.5倍に上昇している。最低賃金(全国加重平均)は2013年に764円であったが、2023年には1002円まで上昇している。2024年には社会保険の適用拡大が中規模旅館にも及ぶと予想される。会社が負担する法定福利費を考慮すると、実質的な最低賃金は1142円に達することになる。宿泊施設の建設コストも過去10年で1・4倍に上昇している。2021年以降の資材不足と円安が建設コストの上昇をさらに加速させている。
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