【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 686】宿泊料金の値上げ方法〈4〉 青木康弘


 前回に引き続き、円滑に値上げするための方法を紹介しよう。多くの旅館・ホテルで値上げが実施・検討されているが、人件費や水道光熱費、工事費をはじめとする多くの費用が宿泊料金の上昇を上回るペースで大幅に値上げされている。速やかに対策を講じなければ、赤字に転落するリスクもある。

 値上げを行うためには、お客さまが比較対象とする競合施設に、自施設のポジションを近づけていく必要がある。例えば、ある地域に異なる価格帯の旅館・ホテルが4軒あるとし、皆さまの施設が2番目にグレードの高い施設だと仮定しよう。値上げを進めるためには、1番目にグレードの高い高級施設に似ているとお客さまに認識してもらうことが重要である。

 グレードの高い施設を探しているお客さまにとって比較対象となることで、高級施設の価格帯での販売が可能となる。そのためには、コストパフォーマンスを前面に押し出したプラン内容や写真イメージは避けるべきである。高級施設と比較した際にチープさが際立ち、比較の対象から外されてしまう可能性がある。

 高級施設と同等の客室を安価に利用できるというメリットをお客さまにアピールしたいという考えも理解できる。しかし、お客さまの視点は異なる。客室が高品質であっても、料理やサービスが劣るのではないか、施設が老朽化しているのではないか、口コミ評価が低いのではないかということが懸念されやすくなる。

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