【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 715】民間主導の観光まちづくり(2) 青木康弘


 前回に引き続き、観光まちづくりを推進していくために、民間の宿泊事業者がどのように取り組むべきかを説明しよう。観光コンテンツ作りには地域内の協力体制が不可欠だが、地域住民と行政、民間の関係性がうまくいっておらず、観光コンテンツ作りに苦戦している地域は少なくない。

 そもそも、魅力的な観光コンテンツは計画や戦略によって意図的に作られるものではなく、地域の住民や移住者が自発的に行う取り組みの中から自然と生まれてくるものである。文化や歴史、風土、自然環境、人々の暮らしといった観光とは直接関係のない地域の独自性や個性に基づくもので、他の地域のまねをしても再現性のあるものではない。

 例えば、地元の特産品を使った料理や手作りの工芸品、伝統的な祭りやイベントは地域ならではの魅力を持っている。このようなコンテンツは地域の人々の情熱や創意工夫から生まれたものであり、観光を目的として始めたものではない。たまたま観光客が地域の魅力として発見し、それを広めることでさらに多くの人々がその地域を訪れるようになり、観光コンテンツとして認知されるようになったものだ。

 このような前提を踏まえると、地域の魅力に引かれた担い手が集まり、生活の居を構え、自主的に活動できる環境づくりが観光コンテンツ作りに欠かせないことがわかる。民間の宿泊事業者の関わり方としては、生まれたばかりの観光コンテンツの宣伝や商業化に協力し、担い手が生活の糧とできるようにすることである。宿泊プランに新しいアクティビティを組み込んだり、宿泊客にフロントでお勧めしたり、館内で創作品を展示したり、売店で販売したりするなど、できることは数多くある。

 思いつきで一時的に取り組むのではなく、コツコツとやり続けることが大切だ。担い手にとって安定的な収入源にならなければ、観光コンテンツ作りを続けることはできない。このような意味で、観光コンテンツ作りを単発の補助金に頼るのは賢明ではない。

 わが町には観光コンテンツが少ないと嘆く前に身近にいる担い手の活動をサポートすることで、次々と若い担い手が移り住んでくるような町にしていきたい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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