
前回に引き続き、マーケティングの専門知識がなくても実践できる、生成AIを活用した販売促進の進め方を紹介したい。
販売促進活動を確実に実行するためには、社内の各部門がスケジュールを共有し、それぞれの役割を明確にすることが不可欠である。例えば、営業・企画部門はイベントのコンセプト立案やプラン造成、SNS発信などを担当し、客室部門はお客さま向けの案内マニュアルの作成や備品の準備を行う。また、料飲部門では、テーマに沿った料理の試作や食材調達を進めるなど、各部門が連携しながら販促に取り組む体制が求められる。
このような部門横断の取り組みは、週単位のスケジュールとして明示しておくことで、遅れや混乱を防ぎ、計画的な実行が可能となる。各部門から中心メンバーを選出し、月次の営業会議や業績会議において進捗(しんちょく)状況を報告・共有する仕組みを設ければ、全体の統制が取りやすくなる。理想的には、半年先までの施策について議論・共有できる体制を整えることで、突発的な事案にも柔軟に対応できる。会議の録音データを生成AIに解析してもらえば、参加者の発言内容や今後の取り組み事項、担当者、期限を自動で整理してくれる。
イベントの企画や実施を社内だけで対応することが難しい場合には、外部のマーケティング企画会社やイベント会社の活用も一つの選択肢となるが、企画立案だけであれば生成AIでも担うことが可能だ。例えば、「6月ごろをターゲットにした雨の日を楽しむをテーマとした街歩きイベントを企画してください」と生成AIに依頼すれば、「紫陽花(あじさい)めぐり」のルートを設定したガイドツアーや、地域の観光名所に合わせた傘のアート展示、雨の日限定のスイーツフェアやフォトスポットの設置など、梅雨ならではの魅力を打ち出した体験型イベントを企画してくれる。
販売促進を成功に導くには、強いリーダーシップを持った担当者の存在が不可欠である。とりわけ、慢性的な人手不足に直面している調理部門などに新メニューの開発やイベント対応を依頼する際には、部門間の調整力と信頼関係が求められる。現場の若手スタッフが上司に協力を仰いでも、「忙しいから無理」と断られるケースは少なくない。そのような状況を打破するには、社長や女将の直属として全社的に販売促進を推進できるリーダーを任命することが有効である。各部門に影響力を持つ人物を中心に据え、協力体制を築くことで、組織全体の推進力を高めることができる。
販促計画を絵に描いた餅で終わらせないためには、「生成AIの活用」「部門間の連携」「リーダーシップの確立」という三位一体の体制が欠かせない。AIによる業務効率化を推進すると同時に、社内での情報共有と責任分担を明確にし、全社的に販促を統括するリーダーを中心とした体制を整えることが重要である。こうした取り組みを継続することで、実効性のある販売促進を実現できるようになるだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)
(観光経済新聞2025年4月14日号掲載コラム)