前回に引き続き、金融庁から公表された「金融仲介機能のベンチマーク」について紹介しよう。全国の金融機関が対象で、皆さまのメイン行の重役も対応に追われていることだろう。当然のことながら、旅館・ホテルに対する取引方針にも影響するので理解しておくことをおすすめする。
各金融機関が自身の事業戦略やビジネスモデルなどを踏まえて選択できる項目を「選択ベンチマーク」というが、50項目にも及ぶので旅館・ホテルに関係の深い項目だけ紹介しよう。
1、「中小企業に対する経営人材・経営サポート人材・専門人材の紹介数」
旅館・ホテルに対してコンサルタントやマーケティング支援などの専門会社の紹介が増えていくことが予想される。ただし、メイン行からの紹介だからといって皆さまの旅館・ホテルに役に立つ存在とは限らない。専門性や実績、相性を冷静に見極めて判断したほうがいい。銀行から紹介されたコンサルタントを導入したら、驕傲な態度で一方的に自分のやり方を押し付けてきてトラブルになったというのはよく聞く話である。銀行からの紹介だからといって無条件に信用しないほうがいいだろう。
2、「事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、および、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数」
旅館・ホテル業は一般に労働生産性が低いと言われているので、金融機関からの指摘が増える可能性がある。生産性が低くなる要因として重要なものは、料金設定が安すぎる(販売手法やブランディングに課題あり)、シフト投入人員が過大である(シフト組みが現場任せであること、また、トレーニング不足が原因)、手書きの帳票など効率の悪いやり方をやっている(ITの活用が遅れている)―などである。
ちなみに、ローカルベンチマークとは、経済産業省が開発した、企業の経営状態を把握するための無料ツールである。決算書などの定量情報や事業に関する定性情報を入力すると簡易的に診断してくれる便利なものである。皆さまも無料でダウンロード可能だ。
ご興味あれば、ローカルベンチマークというキーワードでネット検索してほしい。ツールがダウンロードできるサイトを見つけることができるだろう。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)