【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン363】2017年に取り組むこと その4 青木康弘


 前回に引き続き2017年に取り組むべきポイントについて紹介しよう。今年は「油断していると足下をすくわれるリスクの多い年」となるだろう。好調の中でも、リスクの芽を早く見つけ対策を打っていきたい。勝って兜の緒を締めることである。

 ■ホテル無個性時代に注意する

 この数年、旅館・ホテルのリニューアルや新規オープンが急速に進んできたが、同質化が進んでいることは懸念すべきことである。この傾向は、特にビジネスホテル業態で顕著である。大手ビジネスホテルチェーンであれば、建設コストの低減やブランドイメージを維持するために、類似したホテルを建設していくことになる。

 異業種からの進出であれば、意匠や設計を個性的なものにするオーナーも一部にはいるが、基本的には成功しているホテルをまねたものとなる。開発部門の担当者や金融機関の審査担当者にとっても、すでに成功しているビジネスホテルの規格であれば稟議を通しやすい。

 このような考え方で旅館・ホテルのリニューアルや開発を進めるとどうなるか。どこも似たり寄ったりの旅館・ホテル間の競争となるのである。

 画一化された館は清潔感があり機能的であるため、周辺エリアが古い旅館・ホテルばかりであれば高い集客力を得ることができるが、同一エリアで同一仕様のものが乱立すると宿泊需要が落ち込んだ時に一気に価格競争に陥るリスクをはらんでいる。

 実際にリーマン・ショック以降にビジネス出張の需要が急減した際には、宿泊料金の値引き合戦に加えて、実質的に宿泊費のキャッシュバックであるクオカードをつけたプランや、現金をキャッシュバックするという販売施策が流行した。消費者が判別できるような差が少ないために、価格訴求するしかなくなったのである。

 都市部のホテルマーケットは、昨年より成長期から成熟期へ向かっていると言われている。これから旅館・ホテルの開発やリニューアルを行うならば、いかに個性を発揮して差別化を図るか検討した方が良いだろう。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

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