リーマン・ショックや東日本大震災の影響による落ち込みを乗り越えて順調に回復してきた国内の旅館・ホテルマーケットも、成熟化の兆候が見え始めてきた。成長の余地を残している地域は多いが、全国的にみると延べ宿泊者数、稼働率とも伸び率が鈍化しているのが実情だ。
金融機関も旅館・ホテルのマーケット動向を注視している。これまで担保がしっかりしていれば、開発やリニューアル費用の全てを融資してくれたが(フルローン)、最近ではメイン行から融資を断られるケースも増えてきた。
今回コラムでは、マーケット状況が不透明感を増す中で、円滑に開発リニューアル融資を得るコツについて紹介しよう。
1、ストーリー性のある事業計画を提出する
融資申し込み時に提出する資料が、平面図と大まかな収支計画だけになっていないだろうか。金融機関の担当者が旅館・ホテル業に精通していれば、少ない資料でも稟議書を作成してくれるが、そうでない場合は資料提出の段階で不利になる。社内稟議で必要と思われる情報はあらかじめ事業計画書に盛り込んで提出することが望ましい。
主な内容は、基本計画やコンセプト、宿泊単価や稼働率の算定根拠、原価・経費の算定根拠、収支計画、返済計画、マーケット環境、競合環境、自社の強み(これまでの実績と今後どのように差別化するか整理したもの)などである。
単に情報をまとめるだけでなく、自館がいかに成功し問題なく返済できるかストーリー性のある計画書を作りたい。社内で作るのが難しければ専門家に手伝ってもらうとよいだろう。
2、新しい業態について理解してもらう
ゲストハウスやキャビン型ホテルなど、従来の旅館・ホテルの業態とは異なる施設を開発する場合には、事業計画だけでなく、マーケット環境や他社事例などの資料を取りまとめて丁寧に金融機関の担当者に説明することが望ましい。知識の乏しい担当者だと、昔ながらの簡易宿所やカプセルホテルをイメージしてしまうことがある。
特に、担当者がイメージする施設の稼働率が低かったり、歓楽街に立地していたり、老朽化が進んでいたりすると、否定的に受け止められてしまうので注意が必要だ。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)