前回に引き続き、オペレーター選びに失敗しないためのポイントを紹介しよう。「最初に提案されていた話と違う」「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう気をつけたい。
3、契約書の内容をよく理解する
旅館・ホテルのオーナーとオペレーターとで交わす契約書は、マネジメントコントラクト契約書(MC契約書)、賃貸借契約書のほか、加盟店契約書(FC契約書)、業務委託契約書などさまざまな形態が存在する。
契約書はしっかりと中身を熟読して吟味し、安易に押印しないようにしたい。オペレーターからの口頭での内容説明や顧問弁護士のチェックだけではビジネス上のリスクについて十分な判断ができないので留意しよう。
特に、後々紛争の原因となりやすいのが、報酬・家賃の決定方法、中途解約の定め、修繕・設備投資の責任区分である。MC契約の場合は、売り上げ・GOP(償却前営業利益に近い概念)の数%をオペレーターへ報酬として支払うことになるが、GOPの定義はオペレーターによってまちまちであるので、正確に確認しておきたい。
また、委託報酬以外に、消耗品や調度品、什器備品などについて割高な業者からの調達を指定されることもある。オーナーとして経営をどこまで制限されるか調印前に確認しよう。
中途解約についての定めがないためにトラブルに巻き込まれるケースもある。長期の家賃保証や借り上げ保証というのは、アパート業界にもある話だが、オペレーターの実力によって期待収益が大きく異なる旅館・ホテルの場合は、長期契約は必ずしもオーナーにとって有利な話ではない。
長期の契約を結んでいる場合には、オペレーターが怠慢な運営をしていても中途解約することは容易ではない。オペレーターによっては契約書に一方の申し出だけでは中途解約できないようにするケースもある。もし長期の契約が前提となる場合には、中途解約や家賃改定の条件はしっかりとチェックしておこう。
修繕・設備投資の責任区分については、特に新興オペレーターと取引する際には注意したい。経験豊富なオペレーターであれば、FFE準備金を積み立てておくものであるが、新興オペレーターの中には見かけの収支をよく見せようと将来の修繕投資について十分な予算を割かないケースもある。
オーナーにとっては保有不動産の価値を維持するという動機付けとなるが、オペレーターにとっては目先の収入を減らすことになるので、できれば修繕投資はやりたくない。10年、20年経過した時に旅館・ホテルの商品価値を落とさないためにも、責任区分は契約書上で明確に定め、予算化しておくことをおすすめする。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)