お客さまの多くは夕方に到着、翌日午前中には出発される。そのわずかな時間の中でどれだけご滞在を楽しんでいただけるのか、それを提案するのが宿の役目であり、昨今、商品力アップに向けてさまざまな相談が寄せられる。
おすすめしているのが、スパやエステなどの導入である。休眠している宴会場やカラオケボックス、クラブ、ピロティなどがあれば、それを改修してスパやエステサロン、あるいはマッサージサロンなどを導入することで、アピール度抜群の商品が誕生する。温泉があれば相乗効果をもって有意義な滞在を楽しんでいただけるようにと、あれこれ工夫して設計に向かう。温泉好きな日本人のみならず、海外からのお客さまにも喜んでいただけるからだ。
スパといっても、近年は女性だけの楽しみではない。例えば、カップルで水着のままゆったりと過ごせるリビングルームのようなスパがあってもいいし、男女別に裸で過ごす温泉ゾーンも用意し、お客さまがシーンによって使い分けられるように配慮することも考えられる。本格的なエステゾーンを併設することで、総合的なリラクゼーション施設として位置づけることもできる。
ある宿では、地下にあったカラオケルームをスパへと全面改修することで好評を博している。地下にあることを活かした神秘的な空間とすることをコンセプトに、類例のなかったおもてなし空間が誕生した。売り上げアップにも大きく貢献していると聞く。
スパの自然環境にも目を配りたい。日本の四季折々の風情はスパの魅力を倍加させるだけでなく、商品力を長持ちさせる。できることなら非日常感の演出とリフレッシュのダブル効果を願って、サウナを導入してみてはどうか。そこに庭景色を眺めるテラスがあれば、ひと汗流した後の爽快感もひときわだ。岩盤浴やエステマッサージなども導入をおすすめしたい。お客さまが2~3時間を過ごせる施設となり、自ずと収益を生む存在となる。
大浴場のあり方にも目を向けたい。湯に浸かって過ごす時間は、ただ身体を洗うためだけではない。風の音や木々のざわめき、虫の音を感じて過ごせるように、大風呂の窓を開放することも考えられる。大風呂への風除室を兼ねた洗い場にし、加熱暖房すれば大浴場を新たな魅力を伴った施設へと再生できる。洗い場を別に設置すれば、静けさが魅力の入浴空間にもなる。さらに半露天風呂や本格的な露天風呂などの設置も可能になり、商品力が増強できる。大浴場は、お客さまが心を洗う空間と考えてほしい。
(談)