女性版ダボス会議とも言われる世界女性サミット「Global Summit of Women」(GSW)が5月11~13日にグランドプリンスホテル新高輪(東京・品川)で開催された。1990年から始まったGSWは、ほぼ毎年開催都市を変えて、実施されている。
世界約80カ国から千人を超す民間、政官、NPOなど領域を超えた女性リーダーたちが参加する国際会議である。女性の経済的自立やビジネス参加、政治参加への戦略といった課題を参加者が共有しつつ、解決に向けた議論が国を越えて展開されていく。
初の東京開催となった今回は、過去最大規模となる62カ国から約1300人が参加し、「ウーマノミクスを超えて」をテーマに熱い議論が繰り広げられた。
ウーマノミクスとはウーマン(女性)とエコノミクス(経済)を組み合わせた造語だ。就業する女性が増えれば、企業活動が活性化し、消費の拡大が期待できる。この社会や経済に好影響を与えるのが、ウーマノミクスの基本的な考え方なのだ。
世界会議の議論と聞くと、どこか遠いところの話のように感じるが、実はそうでもない。どんな小さな組織でも女性は「ガラスの天井」の存在を感じる時はあるし、育児や介護のためにキャリアを諦めざる得ない時だってある。
ガラスの天井とは組織内で女性が昇進あるいは登用されていく際に、ある一定のところまで行くと見えない壁(天井)にぶつかり、それ以上は進めなくなることを指す。
同期の男性社員が順調に部長、取締役、社長と上り詰めていく一方で、女性は昇進も遅く、役員になったとしても平の取締役どまり。なぜ、女性は冷遇されるのか。そこには表向きは男女平等でも、オトコの論理で物事が決まっていく現実がある。
世界会議GSWで登壇した女性たちは、いばらの道を切り開いてきた開拓者たちでもある。今回は、東京都知事の小池百合子氏も登壇した。
女性、黒人、貧困、無学歴などさまざまな事柄で差別されながらも屈せず、既存のルールや価値観を変えるべく信念を持って戦ってきた女性たちは強い。
旅館業界は接客係を中心に圧倒的に女性の就労者が多い。しかも有期雇用、非正規、シングルマザー、未婚の熟年女性と各人の背景もさまざまだ。昇格や昇給は適切に行われているか、不当な扱いを受けていないか。
働き方改革は経営者が現場の声に耳を傾けることから始まる。旅館で働く女性の地位向上に努めたい。