【道標 経営のヒント 106】暴風雨から身を守る 佐々山建築設計社長 佐々山 茂


 百年に一度の大地震に備えることに目が行きがちだが、毎年のように起きる風水害にも対策を講じなければと今年の夏はつくづく思い知らされた。台風21号で関西空港が浸水し、その日の未明に北海道で震度7の地震が起きたことは記憶に新しい。

 猛暑に加え、今年の夏は自然の猛威にさらされた。この台風では和歌山市が進路の右側に当たり、風速57メートルの風に80~100ミリの雨が降った。クライアントの旅館は1961年の第二室戸台風で木造の1階が柱を残して波でさらわれたが、今回はその後に造った堤防を波が乗り越え、玄関前の道と裏道が川になった。社長は出張を取り止めて台風に備え、風除室に迫る海水と戦い、裏口では合板の防潮堤で浸水を防いだ。7月に改修オープンしたばかりの建物は風が強いことを想定していたので無傷だった。

 リゾートは海や川、山の景色が素晴らしいところに立地しているが、自然はいざ暴れだすと手が付けられない。高波や大潮で港には海水が押し寄せ、暴風雨で河川はあふれ、山は暴れる。

 地震に対しては構造基準が厳しくなったが、風水害に対して建築は意外にもろい。建築設計者の想定している風速30~40メートルの風と、時間雨量50ミリを大きく超えると気が気でない。山では倒れそうな木がないか、落ちそうな浮石がないか、土が流れていないか、斜面の状態に常日頃、気を付けたい。

 屋上の排水口は落葉で詰まるので清掃が必要だ。排水能力を超えた雨が降っても建物に水が入らないようにオーバーフローを取る必要がある。外壁から漏水することが多く、クラックやコーキングにも気を付けたい。軒天井や屋根は欠陥箇所があると風で壊れることがあり、痛んでないか点検しよう。ガラスは熱線反射フィルムを内側に貼っておくと割れても大事にならないし、夏の日除けにも効果がある。ガラスはコーキングが劣化していると割れやすくなる。軽量鉄骨は20年もたつと錆(さ)びて断面がなくなっていることがあるので注意しよう。

 機械類は水に浸かると使い物にならないので土嚢(どのう)や簡易な防潮堤で備えをしたい。停電した時に電話、パソコン、スマホが使えるように電圧変動の少ないインバータ型ポータブル発電機を用意しておくと役に立つ。自然災害から建物を守るためには点検や見守り、土嚢や防潮堤などの備えをしよう。

 この原稿を書いている時も台風24号が日本列島を縦断中で、心配が尽きない。私もガレージの排水溝を掃除して、植木鉢を片付けよう。

 
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