【道標 経営のヒント 135】5つ星の宿に感じ入る日々 宮坂 登


 栄えある「5つ星の宿」の編集を承っていて、あと数日で印刷入稿というところまでたどり着いた。

 今年は特に印象深い。全体的に「宿のこだわり」が例年以上に強まっている気がした。背景にあるのは「この本は旅行エージェントの方々も見ているから、新しい情報をきちんと分かりやすく盛り込みたい」という考え方かもしれない。また、安定を求めるのではなく、次代に向けておもてなしの刷新や革新を続けていこうとする積極的な経営姿勢を打ち出している宿の意欲に感じ入ることも多かった。

 ある宿の方からお電話をいただいたが、校正段階で「句読点」の位置までもチェックしているのは、どんなことにも完璧を期していないとおもてなしの劣化につながってしまうという危惧感からだという。編集者として、目の覚める思いだった。

 どの宿についてもウェブサイトをはじめさまざまな情報を得て整理してから執筆に臨むのだが、サイトにはまだ紹介されていない情報を盛り込んでほしいという要望も多かった。特に客室については大なり小なりリニューアルをしている宿が多く見られ、たとえそれが数室の工事であっても宿にとっては大きなニュースであり、お客さまへのプレゼンテーション要素として決しておろそかにできない情報だということも改めて思い知らされた。建物全体を大がかりにリニューアルし、施設のあり方や滞在コンセプトまでも刷新、ついには館名までも変えてしまうほどの革新を行った宿もあれば、すばらしい温泉施設を持ちながらも料飲施設を大刷新し、宿の新たな楽しみ方を提案する宿もある。さらに、今年度の施設リニューアルを予告してほしいという宿も多く、女将さんから電話で意図をお聞きし、記事内容にも具体的な指示を受けることがあった。宿は進化だけでなく、深化もしている。そんな感慨も抱いた。

 また、禁煙室や禁煙フロアの増加も見逃せない要素で、可能な限り記事化に努めた。宿でも禁煙・分煙についてさまざまな考え方があるが、お客さまにクリーンな環境で滞在を楽しんでもらいたいという考え方は時代を鑑みなくても当たり前の気もした。今後もこの傾向は強まっていくのではないかと思う。

 通常はいっさい広告出稿はしないが「この5つ星の宿だけは別」とオーナーさんの多大なる熱意とともに校正していただいた宿もあった。大切な本がますます大切な本になってきている。至らない部分が多いが、各宿のご担当の方に教えられる日々を繰り返している。紙面を借りて多くの方に感謝したい。

 
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