【道標 経営のヒント 139】インバウンド客の行動圏 宮坂 登


 京都祇園に所用があって花見小路の裏路地を歩いていたら、着物姿の中国人観光客たちが自撮り棒片手に騒いでいた。女性陣たちがまとっているのはレンタル着物だ。その様子を何気なく眺めていたら、ゴミを電柱脇に投げ捨てている。騒がしいし、マナーも何もあったものではない。「勘弁してくれよ」という思いで注意したら、不服そうな顔をしながら何も言わずに立ち去っていった。京都のゴミ問題が深刻と聞いていたが、なるほどこういうことかと思った。街のあちらこちらに掲げてある注意書きサインも彼らの眼中にはないような気もした。

 つい先日は川越に行く用事があり、仕事の合間にお菓子横町を歩いていたら、台湾人観光客の一行に出くわした。狭い道路で、狭い店舗で、ワイワイガヤガヤわが物顔でふるまうその姿に違和感を感じるのは筆者だけだろうか。

 せっかく日本に来たんだから、存分に楽しんで帰ってほしいと思う気持ちもあるが、どうも釈然としない。今年3月の訪日外国人観光客数は1カ月だけで267万人を超えたというが、外国人観光客の日本での行動圏が広がっている実感がある。有名観光地だけではなく、地方都市の路地裏、横丁で目にするケースも多い。街を歩けばいたるところに外国人観光客がいる。夜は新宿で会食があったが、街角ではB級グルメ店をのぞき込む外国人たちの姿も多く見られた。都内でも新宿や渋谷などの繁華街だけでなく、何でもない横丁の小さな店を目指して訪れる客も多くなったと聞く。

 中国のある筋から、セレブ向けに日本を紹介する観光雑誌の編集や広告募集を手伝ってくれないかという依頼があり、そのバックナンバーを拝見したら、宿や観光地の紹介だけでなく、商店街の人気店まで調べ尽くしている。裏路地を歩く外国人観光客が多いのもうなずける。

 この時代にインバウンド客を相手にしなければならない旅館・ホテルには敬意を表する。訪れる人すべてがマナーが悪いわけではないが、慣れぬ異文化圏に憩う中ですべてを日本流に過ごすことは外国人観光客にとっても困難なことだと思う。また、単なる「宿泊」を提供するだけでなく、宿周辺の情報をはじめ、プラスアルファの楽しみ方を伝えることも必要だと思う。

 宿の外国人向けサイトは施設やサービスの紹介がメインで、日本文化に適した過ごし方やタウン情報などは付け足しの情報として扱われているケースが多いが、見直しが必要ではないかと思う。「発信する情報の再構築」を真剣に考えるときが来ている気がする。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒