【道標 経営のヒント 154】キャンピング in ジャパン  行燈旅館館主 石井敏子


 若くて一番子育てが忙しい頃、4人の子供たちを精一杯育てている家庭には十分にレジャーに回すお金の余裕もなく、子供たちの情操教育、たくましさを育てるために休みになるとトヨタのハイエースにキャンピング用品を積み込み、よくキャンプに出掛けた。

 家族だけの時が大半を占めたが、時には近所の幼稚園仲間のお父さん、お母さんたちを集め、キャンプ場に最大で五つのテントを立てたこともある。こちらの実態は大人の子供返りと大飲み会が目的だった。キャンプ場のみんなで食べたもんじゃが懐かしい。

 海岸、山、湖、さまざまな場所でキャンプをした。時には川の増水のために夜中にテントをたたんだこともある。

 私のような事情とは違って、最近よく目にする言葉「グランピング」が定着しつつある。こちらはどちらかというと大人の優雅な遊びという趣だ。

 先日、行燈旅館に宿泊した熟年フランス人夫婦は1カ月かけ伊豆半島、紀伊半島、高山、大阪、京都にレンタカーを借りてキャンプ場を点々として帰ってきた。そのご主人は帰ってきて真っ先に私を見つけると、大きな目を見開き興奮気味に日本でのキャンプ体験を一気に話した。

 「信じられないよ、日本のキャンプ場は施設の設備も申し分なく備わっているのはもちろん、フランスと比べきれいで、また価格が1人2千~3千円と安い。フランスは高額だ」。

 「キャンプをしている日本人は皆マナーもよく親切だ。驚いたのは日本人たちのキャンプ道具だ。ある日の若いグループはわずか2時間でテントを立て、完璧にしつらえて豪華なバーベキューをしていた。おまけにたった1泊で帰っていったよ。フランスでは長逗留が多いのに、たった1泊のために来ていたよ」。

 それを聞いた私は逆に感心してしまった。すぐにでもフランスのキャンプ場に行きたくなった。

 地方の自治体の方、特に海外にPRするにも材料がないなんて思っている方もいると思うが、今すぐにでもフランスに視察に行った方がいいのではなんて思ってしまった。外国人の冬のスキーは定着したので、次はキャンプブーム到来となるかもしれない。

 このように時間と余裕を持ち、好奇心の強い外国人は海外にもたくさんいる。そこで空港のレンタカー会社と組み、車と一緒に必要最低限のキャンプ用品をレンタルして誘客したらどうだろう。夏の北海道、伊豆半島のビーチ巡りも良いだろうし、冬に那須塩原当たりの温泉付きのキャンプ場なども海外の旅行者は驚くことと思う。候補地はたくさんある。

 このご主人は最後にたくさん荷物があるために、日本で買ったキャンピングチェアを2脚私に遠慮しながら置いていき、「また来年もキャンプに来る」と言って笑顔で帰っていった。

 私もいつか海外でキャンプをしてみたくなった。日本と違う雄大な景色を見ながらたき火をし、一杯飲んだらどんな気持ちになるのだろう。また夢が一つ増えた。

 
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