【道標 経営のヒント 175】「選ばれる」難しさ タグ広告プランナー 宮坂登


 毎年「人気温泉旅館ホテル250選認定証授与式」に参加すると、新たな250選のリストを見ながら、認定されることがどれほど難しいことなのかと思いをはせる。今回が20回目の250選認定ということで、初年度から20年連続で選ばれている宿もあれば、19回連続で認定されていたものの、20回目で認定されなかった宿も数軒あって、悲喜こもごもである。1年に1回の認定のために怠ることなく努力を重ね続ける宿の皆さまに敬意を表したい。

 新たな250選のリストを見ていて気付いたのだが、名だたる旅館・ホテルの中に初めて5つ星の宿に認定された宿が11軒あった。その中、昨年度の祝賀パーティーの片隅で「あと1回選ばれれば、5つ星の宿なんです」とオーナー様と女将さんが楽しみにされていた宿の名前を見つけた。後日、掲載お申し込みをいただいた際にお祝いのメッセージを送らせていただいた。

 祝賀パーティーの席上では、今回250選に初選出された宿や数年ぶりに選出された宿の皆さまとお話しさせていただく機会があった。一様に口にされるのは「選ばれることはもちろん、選ばれ続けることって本当に難しい」という実感である。初選出の宿の社長様は「選ばれたといっても、施設についてもおもてなしについてもまだ全然自信がない。選ばれたことで、かえって気持ちが焦ってしまっている。もっと高い評価をいただくために何をしなくてはならないか、じっくり考え直さなければならない」と決意めいたことをおっしゃっていた。また、数年ぶりで選出された宿の社長様は「今年は選ばれるだろうと思っていてもなかなか選ばれずにいるうちに、あっという間に年月を重ねてしまった」と今回選ばれたことにホッとした口ぶりだった。

 その一方で、5つ星の宿に継続して認定されている宿の女将さんは「今のところ、施設面もサービス面も新たな取り組みはない。うちの魅力は周囲の自然しかないので、それをアピールしていくしかない」と嘆く。またある宿の社長からは後日「私どもは資源は豊富にあるのですがうまくマーケットに浸透させることができていない現実がある。何か良いアドバイスをいただけないか」というメールをいただいた。

 どの宿の方からも「ぜひ一度来てください」とのありがたいお言葉を賜ったが、それ以前にもっと応援に値する原稿を作らなければという自戒の気持ちで胸が詰まった。当面は編集で身動きが取れないが、終わったら、そんな方々との出会いを求めて旅に出たいと思っている。

 
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