【道標 経営のヒント 211】ネット上での誹謗中傷2 タグ広告プランナー 宮坂 登


 旅館・ホテルでは集客に際してさまざまなネットエージェントサイトを利用しているが、どのサイトにも「クチコミページ」が存在し、宿に宿泊したときの印象が良くも悪くも書き込まれている。「掃除が行き届いていない」「従業員の対応が悪かった」「食事の際の対応がなっていない」などのクレームも多く見て取れ、宿側も対応に追われる。

 担当者がその一件一件に対して詫(わ)びのメッセージを掲載しているケースをよく目にするが、読むのも痛々しい。ネット予約を考えている人々がそれらのクチコミを読んだら、やはり予約にはつながりにくい。宿も日々の努力が報われず、臍(ほぞ)をかむ思いではないか。それとは別の問題として挙げられるのは、すでにネット上に広く拡散してしまった悪質な誹謗(ひぼう)中傷である。

 今年3月に、アメリカのマサチューセッツ工科大学の研究者たちが興味深い調査結果を発表している。2006年から2007年まで、約300万人が450万回以上リツイートしたつぶやき(BOTは含まず)を研究対象に分析したところ、ツイッター上では、フェイク(虚偽)ニュースの方が真実のニュースより30倍も広がりやすいという結果が出たという。例えば、真実は1600人以上に届くことがなかったが、うそはあっという間に4万7千人以上に拡散されたという計算になる。すさまじい拡散ぶりである。

 実例がある。全国的に高評価を得ているある宿では、2年ほど前から館名でネット検索したときのサジェスト機能に、「ブラック」というネガティブワードが候補として現れていて困り果てていた。集客上はもちろん、新卒募集面では大きなイメージダウンである。募集概要を見るために、館名をネット検索しただけで、「ブラック」というワードが目に飛び込んでくるため、応募する側もこれからの職場としてふさわしいかどうか判断を下す前に他サイトへ行ってしまう。人手不足で悩んでいる旅館・ホテル業界、可能性を秘めた人材を逃してしまうことにもなる。

 宿ではサイトの制作会社はもちろん、ネットのプロにも対応策を依頼したそうだが、どうしてもネガティブワードが消せずにいた。誹謗中傷はそんなに簡単に消せるものではない。セキュリティ対策が万全ではない制作会社が多いのが実情である。

 誹謗中傷といってもケース・バイ・ケース。実害に応じた対応策を練る必要がある。筆者はその分野での専門スタッフとのコラボレーションを始めており、先の宿のネガティブワードの解消にも一役買った。詳細は次回に伝えたい。

 
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