【道標 経営のヒント 227】今だからこそ、できること タグ広告プランナー 宮坂登


 前回、この欄で「オヤジたち、手を洗えよ!」という一文を載せた。反響が大きく、各方面からお電話やメールをいただいた。「同感だ。その通りである」と。それからおよそ1カ月。ガラリ音を立てるように世情が変わった。

 新型コロナウイルスのまん延は世界に広く及び、日々感染者を増やしているのは周知の通り。ウイルス防止策の最たるものが「手をよく洗うこと」とさまざまな場面で喧伝(けんでん)されているのを見ると、「これで分かったよね!オヤジたち」と言いたくなる。今までどんなふうに手を洗ったらいいのか知らなかった、なんて絶対言わせない。どこかに置き忘れたままだった道徳観にも気付いてくれたらなおうれしい。

 ある宿の女将さんから、フロントでスタッフがマスクをかけたほうがいいのかどうか、という相談をいただいた。消毒用のアルコールももちろん用意してあるという。しかしながら、お客さまとマスク越しに会話するのは失礼ではないかと考え、会議で“もう少し状況を見極める”という結論に達した直後の電話だった。

 当方の返答は、「マスクをかけるのは相手の健康を思いやる気持ちの表れなのだからかけてもいいのでは」。これで良かった気がする。

 新型コロナウイルス対策うんぬんに関わらず、手を洗うこと、それ自体も「日常当たり前に行わなければならないおもてなし」なのだと思う。多くの宿が「おもてなしは一期一会の心」だと伝えている。今こそが本領発揮のときであるまいか。”相手を思いやる心”は単なる接客シーンだけのものではないはずである。門外漢が偉そうに述べることでもないが…。

 今、多くの宿の方々と原稿のやりとりをさせていただいている。その際に、予約キャンセルが増えてきた、といった現況も知らされる。電話口の向こうで表情を曇らせているのが分かる。旅行会社のカウンターでも朝から晩までキャンセル対応に終始している、とあきらめ表情の対応を見た。でも「じっと耐えて耐え抜いて、春が来るのを待ちます」という静かな決意も聞いている。

 旅館・ホテル業界はかつて世界規模で集団発生したSARSもMERSも力強く乗り越えてきた。それも同時期に起こった戦争や経済不安を伴うダブルショックを受けたにも関わらずだ。

 取引先のあるホテルから、「こんなときだから販促を一、いやゼロからじっくりと考え直してみたい。パンフレットも販促手法もリニューアルして、そのときを待ちたい。手伝ってもらえるか?」との依頼を受けた。

 今こそプラス思考が必要なときである。懸命に手伝うつもりだ。

 
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