【道標 経営のヒント 237】「使っていなければ」から「触っていたら」へ 九州国際大学教授 福島規子


 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が「新しい生活様式」と「業界別ガイドラインの留意点」を提示したのが5月4日。そして、5月14日には「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン」が宿泊業界3団体連名で公表された(詳細は本紙5月23日付2面参照)。本欄では現場への落とし込み方法について検討したい。

 ガイドラインには、新型コロナウイルスの対応策として「お客様が直接触れるモノ」および「触れたモノについての対応」が示されている。

 顧客が直接触れるものとして、「浴場の貸しタオル」「館内スリッパ」「客室備品のコップ、急須、湯呑(のみ)」などが挙げられている。

 浴場の貸しタオルについては、脱衣所内の棚に複数枚のバスタオル、フェイスタオルをそのまま重ねておくのは感染リスクの点からも廃止せざるを得ないだろう。だが、客室にセットする場合でもむき出しのまま重ねておくのは不安が残る。現場では、未使用のバスタオルはそのまま次のお客さま用として使い回すことも少なくない。一見、未使用に見えても、実際は、手に取った後、元に戻した可能性も否定できない。

 そこで、旅館の「新しいもてなし様式」としてバスタオル、フェイスタオル、浴衣、帯をひとまとめにジッパー付きのビニール袋に入れ、「お宿セット」として1人分ずつ用意することを提案したい。感染対策を施した別室でまとめて作業すれば衛生管理も徹底できるし、個別包装は顧客に安心感を与える。さらに、使用済みタオルは、顧客自身でジッパー袋に入れてもらうよう要請し、回収後にバックヤードの所定の場所で回収袋にまとめるようにすれば従業員への感染防止策にもなる。ガイドラインでは「使用済みタオルは回収後に人が触れないよう密閉保管し洗濯・消毒」とあるが、感染の危険性は回収後だけではなく、回収時にもあることに留意したい。

 一方、館内スリッパに関するガイドラインでは「使い捨てに替えるか徹底消毒」を提示しているが「肌に直に触れるモノ」である以上、使い捨てが望ましい。ただし、大型旅館の場合、使い捨てにすると、毎日、大量の使用済みスリッパを廃棄することになる。これを考えると徹底消毒した上で顧客に足袋の着用を要請するのが妥当なところだろう。

 客室備品の茶器については湯呑や急須を入れ替えて置いてあった場所を細部まで拭き上げるにはかなりの手間と注意力が求められる。1部屋当たり2個の茶櫃を用意し、客室清掃後に茶櫃ごと入れ替えるのが合理的だ。

 「使っていなければキレイ」から「触っていたら感染リスク」へ。これからは「一度、提供したものは全て新しいものに取り替える」ことを原則とし、従業員の行動習慣と常識を見直していく必要があるだろう。紙面の都合上、料理提供などの対人接客サービスについては、次回。

 
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