菅首相が2050年にカーボンニュートラルにすると宣言し、大統領当確のバイデン氏はパリ協定に復帰すると明言しています。温暖化効果ガス排出量世界1位の中国は再生エネルギーへの転換と2035年までにガソリン自動車禁止を宣言しています。先行するドイツは昨年、発電量に占める再生エネルギーが46%と化石燃料を上回りました。排出量の上位国が競って対策を講じれば、温暖化効果ガス削減に向かって世界が大きく前進するのは間違いないでしょう。
東日本大震災で一時期節電に動きましたが、その後の宿泊産業はインバウンドなどで好調になり、安倍政権の下で生産性向上に力を注ぎ、エネルギーの多消費については関心が薄くなりました。
コロナ禍で旅館は団体がなくなり個人化が進み、今まで1室平均3名入っていたのが2名に近づきました。お客さま1人当たりの床面積も増え、面積効率が下がり、1人当たりのエネルギー消費量も増えています。
同じ旅館業といっても、稼働率、温泉の量、建物の中身が違うので同列で比較できませんが、1人当たりのCO₂排出量の目安は25キログラムと考えています。2030年に2013年比で26%削減させる「政府実行計画」の数字を当てはめれば18.5キログラム/人日になります。
今、相談を受けている旅館さんのCO₂排出量は48キログラムで、エコ・小委員会の調査の中央値は35キログラム付近です。しかし、現実に18キログラムの排出量で運営している旅館もあり、18.5キログラムは不可能とは思っていません。
ちなみに日本の総排出量を人口で割ると、1人、1日当たりのCO₂排出量は28キログラムになります。火力発電から風任せ太陽任せの再生エネルギーに転換するには、使う側としても無駄なく、効率よく使う必要があります。しかし、旅館の設備システムは増築を重ねて効率が悪くなり、機械任せで、コントロールできていません。
CO₂排出量を削減するとエネルギーに掛かる費用が下がり、そのお金は毎年毎年の利益となります。まずはムダを発見してなくし、その利益で計画的にエネルギー関連の改修を重ねていけば5年10年でかなりの改善効果が出ます。
自然環境の恩恵で生きる旅館は、エネルギー利用では、自然に負荷を掛けない運営をしたいです。それはきれいごとではなく実利につながるのです。エコロジカルに小さなエネルギーで運営を目指すエコ・小の考え方を取り入れ、温暖化効果ガスを削減し、スマートな経営を目指しましょう。