【道標 経営のヒント 302】Uber Eats狂想曲 小倉理加


 最近、撮影時の食事を「Uber Eats」に頼ることが多くなった。確かに、近隣のレストランかデリバリー専門のチェーン店しか選択肢がなかったときよりも、格段にメニューが増える。スイーツだけの取り寄せもできるため、以前、ある著名人の撮影時には、ご本人が差し入れとして有名店のスイーツをUberでデリバリーしてくれたことがあった。注文してからは、どれぐらいで届くかをリアルタイムで追跡できるのも便利だ。

 一方、トラブルが起こったときには非常に面倒なことになる。先日、ついにそれが起こった。ある撮影で深夜まで長引きそうなことが分かり、ディナーを取ろうということになった。そこで、タイ料理レストランへUberでオーダー。アプリ上では経過も順調で、しばらく待つとスタジオに到着のアナウンスが出て、受付のスタッフが届けてくれた。ところが、7点頼んだはずのメニューが3点しか入っていなかった。すぐに、ドライバーへの連絡という機能へアクセス(Uberを通してになる)してみたが、全くつながる気配なし。よく見ると、届いたメニューは足りないだけではなく、こちらがオーダーしたものと全く違うものだった。しかも、注文した品物が届いていないにもかかわらず、「注文の品はいかがでしたでしょうか?」というお決まりのメッセージが送られてくる。

 しびれを切らしたスタイリストさんが、お店の電話番号を調べて直接電話をしてくれた。ところが、店側は「私たちは間違えていません」の一点張り。考えられるのは、ドライバーが二つの注文の受け渡し先を間違えたか、お店が注文を間違えたか。結局、オーダーはネットで調べてキャンセルできることが分かったので、即キャンセルをして、再オーダー。0時ごろ、深夜ディナーを囲むことはかなった。

 ディナーの間中、いずれにしても3点しか注文していない人のところに7点届いたはずだが、その人はどうしたのだろうか?ということで盛り上がった。きっと、食べてしまったのだろうということになったが、なんとも苦い気分が漂った。人間対人間ではなく、間にオンラインが介在する際の不便さや、お金を返せばトラブルではないというシステム、顔が見えないための責任転嫁。原因を尋ねるメッセージにも一切返信がなく、間違えた品物はうやむや。やりどころのない気持ちに包まれ、後味が悪いディナーだった。当然、まだ利用していない人たちは「検討していたけど、今晩のやりとりを見て、やる気が一気にうせた」と口をそろえた。

 利便性を求めた先の不都合な出来事。急速にオンライン化が進む中で、もっと改善してほしい分野だとつくづく感じた一夜だった。

 
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