【道標 経営のヒント 317】プラスチックの使用削減は一人一人の行動変容が鍵 福島規子


 令和4年4月1日から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」、いわゆる「プラスチック新法」が施行される。背景には、海洋プラスチックのごみ問題や気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等がある。政府はプラスチックのライフサイクル全般において「3R+Renewable」を推進し、サーキュラーエコノミー(循環型社会)への移行を加速させたい考えだ。

 3Rとは、ごみの量をできるだけ少なくするリデュース(Reduce)、繰り返し使うリユース(Reuse)、そして、使い終わったものをもう一度資源に戻して製品化するリサイクル(Recycle)の頭文字を取ったもので、リニューアブル(Renewable)とは、素材を再生可能な資源に替えることを指す。

 さて、プラスチック新法では、プラスチックの資源循環を3段階に分けて提示している。第1段階は、プラスチック製品の設計を環境配慮型に転換する「設計・製造段階」、第2段階は、使い捨てプラスチック製品をリデュースする「販売・提供段階」、第3段階は、排出されるプラスチック製品をあまねく回収、リサイクルする「排出・回収・リサイクル段階」である。

 そこで、プラスチック新法では、第2段階の「販売・提供段階」においてプラスチックを使用した12製品に対し、使用削減につながる対策を義務付けた。12製品とはコンビニ・飲食店のフォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、クリーニング店のハンガー、衣類用カバー、そして、宿泊施設のヘアブラシ、くし、カミソリ、シャワーキャップ、歯ブラシの5点である。

 使用削減対策として(1)有料提供(2)受け取り辞退客にポイント還元(3)代替素材の製品や繰り返し使用できる製品への切り替えなどが挙げられている。ただ、(2)のポイント還元は年に1、2回程度しか来館しない宿泊客にとってはメリットが少ないし、(3)の代替品は竹歯ブラシやバイオマス歯ブラシが登場しつつあるものの、コスト面での課題が残る。

 既存のリサイクル法(容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、自動車リサイクル法)とプラスチック新法の違いは、前者が製品に焦点を当てているのに対し、後者はプラスチック製品を設計・製造する人、それを提供する人、使う人、あるいはリサイクルをする人といったように「人の行動」に焦点を当てている点にある。つまり、プラスチック新法が目指すものは、一人一人のリデュース意識に裏打ちされた行動変容による循環型社会の実現にある。

 そう考えるとアメニティ類の(1)有料提供はプラスチックの使用削減を促す抜本的解決策にはならない。施行まであと1カ月半。宿泊客の行動変容を促すような大々的キャンペーンを期待したい。

 
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