【道標 経営のヒント 320】旅館のカーボンフットプリント 佐々山 茂


 カーボンフットプリント(CFP)は、「炭素の足跡」で、主に商品の材料から生産、流通を経て廃棄・リサイクルに至る全体を通して排出されるCO2で表し、「旅」のCFPは交通、食事、宿泊が中心になると思います。

 日本は公共交通機関が整い、日本列島の主要4島であれば飛行機を使わずに隅々まで電車とバスでたどり着くことができます。新幹線、在来線、ローカル線、路線バスとさまざまな選択肢を使って乗り継ぐことで、人々の住むところにたどり着けることは、日本の地方文化の多様性と共に貴重な財産です。

 海外では飛行機を利用し、バスをチャーターし、タクシー、レンタカーを利用するなど手配も大変です。食も生食、発酵食など火を使わないもの、地産地消の魚や野菜などCFPの低いものが多く選べます。

 エコツーリズムや循環型の「旅」に日本は向いているように見えますが、問題は宿泊です。宿泊にはさまざまなスタイルがあり、それぞれのCFPについては把握していませんが、旅館のCFPには問題があります。1泊2食で温泉付きが旅館の基本的なスタイルで、年間のCO2排出量を年間利用客数で割るとお客さま1人当たりのCO2排出量になり、これが旅館のCFPと考えられます。少ない施設は20キログラムCO2以下で、多いところは40キログラムCO2を超えますが、日本の家庭のガソリンを除いたCO2排出量は1世帯当たり年間3637キログラムで、1世帯人数2.4人で割ると1人1日4.15キログラム/人・日になり、旅館は1桁多いのです。

 多いこと自体が問題でなく、それだけのCO2排出量に見合った商品なりサービスの価値に連動していれば理解できますが、同じ商品、サービスで20キログラムから40キログラムと倍以上の開きがあることでこの差は単純にムダな使用と考えています。

 SDGsで示されるように、これからは持続可能性がキーワードで、旅館は元々持続的であり、現在私が設備投資のお手伝いをしている旅館の中にも200年と400年と家業で持続している施設があります。

 欧州では飛行機で旅をするなら市内の移動は車の代わりに自転車を利用するなど、市民がCFPの数値を考えながら生活しているといわれています。旅館のCFPの詳細は専門家に譲りますが、1人当たりCO2排出量15キログラムを目標にしたいと思います。商品の場合はCFPを下げると逆に価格が上がることがあるようですが、旅館でCFPを下げれば水道光熱費が下がり、利益が増えます。具体的な対策をパートナーシップで達成しましょう。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒