にぎわい創造する施設に
未曽有の震災を経験しながらもこうやって多くの宿泊施設が営業を続けられる幸せを感じている。
もちろん被害が大きかった沿岸地域等では客足が戻っておらず苦しい経営を強いられているのは承知している。
しかし、多くの地域で震災前の宿泊客数を超えたお客様にお越しいただいている事実は、ひとえに日本中からいただいた善意の賜物と深く感謝申し上げたい。
9年目を迎えた震災復興は被災地の外から見ると複雑さを増したかのように見える。確かに道路や建物などの都市インフラは整備が進んだ。しかし、市民生活が分断された地域や震災による人口減少で生活の質が著しく悪化した地域など今までとは異なった様相が現れるようになった。
県組合においても復興事業が減少する中で求められる宿泊の役割が変わってきていることを感じる。
単なる泊まるだけの施設から「賑わいを創造し地域とともに存在する宿泊施設」に変化していかないとそこに必要価値を見出せない。
また業界では耐震問題から民泊、新型コロナウイルス等の難問が日を置かずして次々に降りかかってきているが震災被災地である当県においても同様である。加えて当組合では「宿泊税導入」について議会で激しい討論が続いている。
今後、観光予算が漸減することは事実だがそれ以前に税導入による経済環境の悪化は免れないと見て宿泊税導入反対のスタンスを崩さずにいる。いついかなる時もホテル旅館の将来を見据え、その足元を照らす存在でありたいと願っている。
震災から10年目を迎えるにあたり観光を巡る状況は大きく変化している。しかし軸足をぶれることなく新しい観光に向けた歩みを確かなものにしていきたい。
(ホテル佐勘)
佐藤勘三郎理事長