【食と観光 日本の新たな魅力51】 山上 徹


食と観光 日本の新たな魅力

 大根は生食、煮物、漬物、切干などのような調理法で味わえる。また、さまざまな大きさや形の品種がある。

 例えば、大ぶりな桜島大根、女性の足の太さに例えられる練馬大根、京都の冬を象徴する千枚漬けの聖護院大根、三浦半島の三浦大根、金沢の源助大根などと多彩だ。

 大根役者とは演技の下手な役者をいうが、それはなぜであろうか。大根とは生で食べても煮て食べても滅多に食中毒にならないゆえ、芸の下手な役者は当たらないと皮肉った説。

 また、大根はどこを切っても真白いので、素人にかけた説。さらに、演技が素人同然で、技量が乏しく舞台に出ると、場が白けたという説などがある。

 近年、地方創生が叫ばれ、自地方を活性化したいと、その切り札として特産品の開発が摸索される。農産物をそのまま出荷するよりも、地元で加工し、販売まで手掛ければ、特段に儲かるという論理に踊る。

 例えば、大根を販売するよりも、漬物などに加工し販売すれば、価格は高くなり利益を生む。

 しかし、加工した漬物が必ず売れるかといえば、そうは問屋が卸さないのが市場原理だ。

 下手なにわか大根役者の素人が補助金欲しさで開発した模造品で市場参入しても、すでに千両役者の老舗ブランドとの競争では、惨敗してしまうだけだ。

 地方を創生するには例え大根とて、こだわりの千両役者の老舗の商魂までも真似てるか否かが勝敗を決定づけるのだ。

(梅花女子大学教授)

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