加賀前田藩の利家は1583年、金沢城(石川県)に入った。それ以来約300年間、加賀前田藩は「武より文」を重んじ、独自文化を育んだ。
金沢の食文化にはゴリ料理、冶部煮(じぶに)、鯛唐蒸しという三大料理がある。最初のゴリ料理とは刺し身、唐揚げ、佃煮、白味噌仕立てのゴリ汁などが有名だ。
ゴリとは淡水魚で戦前、「ゴリ呼び漁」は金沢を流れる犀川、浅野川の風物詩だった。しかし、戦後、河川の整備や環境汚染などもあり、ゴリの生息が激減した。近年は、金沢郊外の河北潟で獲れる潟ゴリが料理に使われる。
ゴリは「石伏魚、鮴」と書くが、吸盤状の腹ビレで川底にへばりついて休む習性がある。ゴリ漁は2人1組で、ブッタイという三角の竹ざると、ゴリ押し板で川底を削るように強引に追いあげるという漁法だ。ゴリ押しとは、この漁法のように無理やり、強引に物事を押し通すことをいう(諸説あり)。
昨年3月以来、金沢では北陸新幹線の開業効果により、大勢のお客が押し寄せ、旺盛な需要で売り手市場が続く。
そこで、「売ってやる」「食わせてやる」とばかりの店員のゴリ押し的な態度が面白くないとのお客の声を耳にする。
絶好調の時こそ油断大敵、強引な客商売では引潮のごとく、お客は観光地から離れよう。例え一見さんのお客とはいえ、一期一会の出会いの如く、「買って頂く」「食べて頂く」という心配りを売り手は決して忘れることなかれ。
(梅花女子大学教授)