【食と観光 日本の新たな魅力54】鱈腹食う産地への旅を 山上 徹


 魚偏に雪と書く鱈(たら)は北洋の魚で、北海道が本場だ。塩漬けのたらこはマダラの子ではなく、スケトウダラの卵巣だ。鱈は冬期に産卵する。鱈の産卵数は数十万から数百万個に及ぶというけれども、生残率は非常に低く数匹という。

 鱈の由来は雪が降る冬の時節に水揚げされる魚であるとか。また、鱈の腹部が雪のように真っ白なため、血が足らないといった説など。

 海底に生息する小魚などを大口で大量に捕食することから大口魚との異名もある。また、鱈の腹部が膨れているので、鱈腹食うとは腹一杯に食する大食漢を意味する。

 京都の知恩院近くの円山公園内では、約300年前から伝わる「いもぼう」を売る店がある。初代平野権太夫は宮家に仕え、九州行幸のお供の際、唐芋という芋を持ち帰り、京都で栽培したのが海老芋だ。

 これと北海道産のスケトウダラの棒鱈とを炊き合わせたところ、おいしいことが分かった。

 京都は内陸都市ゆえに、物流が不便で鮮魚を食することが難しい。昔から北海道産の棒鱈などが北前船により京都へと運び込まれた。京都人の知恵で芋棒をはじめ、サバズシ、ニシンそばなどは京都の庶民の胃袋を満たした。しかし今や、これらは京都固有の名物食として集客力を発揮している。

 そこで、京都の食の集客力を見習ってか、全国の食材の産地でも食の祭典を開催。よって、産地へと出掛け、本場の味を鱈腹食うイベントを楽しむべし。

(梅花女子大学教授)

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