2016年の訪日客数は約2404万人に達し、過去最高となった。20年に向けて今後ますますの増加が期待される。
多くの飲食店も多言語対応の充実を進めるとともに、訪日客の生活習慣に合わせた受け入れ環境の整備に取り組んでいる。こうした前向きな取り組みと同時に、担い手となる料理人の育成についても議論を進める必要があると感じている。
「食は人の天なり」とは、おいしい料理を作る人は大きな徳を持っているという「徒然草」の一節。
私は料理人の徳は、腕を磨くことによって無限に輝くものと捉え、徳のある料理人に育てることこそ、観光立国を目指すわれわれに求められている喫緊の課題であると考える。
料理人の世界では、長い間、頼りになるのは自分の腕という考えが共有され、厳しい労働条件にも耐えて腕を磨くことが、当たり前の世界だった。しかし、価値観の変化に伴い、料理学校卒の就職希望先は、有名レストランや老舗料亭ではなく、機内食や惣菜を作る工場だそうだ。週休2日や管理された労働時間など、安定した労働環境を望んでいるのだ。
少子化が進み人材不足の今だからこそ、店主・経営者は自ら意識を変え、若い人たちに仕事の魅力を教え、職場環境を改善して、その先にある明るい未来を示さなければならないと思う。
業界全体で次世代の担い手を作るという視点が求められているのではないだろうか。
(国際観光日本レストラン協会理事 藤田観光会長、佐々木明)