【駅メロとわずがたり38】JR神田駅~コロナ禍で実現した「モンダミン」♪ 藤澤志穂子


神田駅

 JR山手線・神田駅のメロディが洗口液「モンダミン」のCMになったのは2023年10月、「お口くちゅくちゅモンダミン」のメロディは、すっかり神田の「ご当地ソング」になった。近くに本社を構えるアース製薬が、2025年の設立100周年の記念事業を考えていた2022年ごろ、社員の間の雑談から発案され、広告利用として実現した。いったん難色を示されたが、図らずもコロナ禍が実現を後押しした。

 「駅メロ」についてJR東日本の場合、地域ゆかりのミュージシャンや音楽家の楽曲を使うことを、住民の署名活動や地元商工会議所など関係者の働きかけがあった上で検討し、地元の総意だからと最終的に受け入れることが多い。JR茅ケ崎駅「希望の轍」(サザンオールスターズ)、JR水沢江刺駅「君は天然色」(作曲:大瀧詠一)、JR福島駅「栄冠は君に輝く」(作曲:古関裕而)など、現在ではよく知られるようになったメロディもそうした経緯をたどっている。多くの人が利用する公共性の高い駅では、誰もが納得できるメロディでなければならない、という判断で、茅ケ崎駅のサザンオールスターズも実はいったん頓挫した。2000年代初頭のことで、まだ駅メロが今ほど普及しておらず、発車ベルと比較した安全性の問題に加え、茅ヶ崎は加山雄三さんほか、多くのミュージシャンを輩出しており、サザンだけがシンボルではない、といった反対の声も住民の一部にはあったようだ。それでも諦めなかった地元商工会議所が、サザンの凱旋ライブをきっかけに再挑戦し、2014年に実現するまでに十数年を要した。

 「モンダミン」にいったんは難色を示したJR側だったが、コロナ禍による運賃や広告収入の減少から新たな収益源の確保を迫られ、駅メロの広告利用にかじを切る。その第1号が神田駅で、メロディのみならず、5年間のネーミングライツの契約にまで至る。副駅名を「ア―ス製薬本社前」とし、入り口の名称をロングセラー商品で固める。北口は「モンダミン口」、南口は「アースジェット口」、東口は「サラテクト口」、西口は「バスロマン口」と徹底している。2023年10月~2028年9月末までの5年間限定だ。

 社員からは「『うれしい、誇らしい、驚いた』『通勤は別の駅だが、帰りは神田に寄ってメロディを聞いてから帰る』といった反応が寄せられている」(広報)。広告の費用対効果としては、実際に商品の売り上げ増など目に見えた数字のプラスはないという。だが全国的なニュースとなったことで、宣伝効果は十分にあった。100周年となる今年2025年はいくつかのイベントが予定されている。

 この「駅メロ」が、JR山手線・池袋駅「ビックカメラ」のテーマ曲の実現につながっていく。

 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)、「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)など。


神田駅


(2025年2月17日号連載コラム)

 
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