京浜急行は2008年、駅で電車が接近する際のメロディを一般公募、2117通の応募があり、人気が高かったのは「横須賀ストーリー」「ブルーライトヨコハマ」で、そのまま横須賀中央駅、横浜駅で採用された。東京都品川区にある青物横丁駅では、地元出身の島倉千代子(1938~2013)の「人生いろいろ」が採用された。京急では順次、各駅でメロディを導入、この駅では2008年12月からとなった。
この歌は1987年4月発表、作詞・中山大三郎(1941~2005)、作曲・浜口庫之助(1917~1990)で、ポップス調のメロディーが広く親しまれ、島倉の最大のヒット曲となる。浜口は島倉が「今まで日本車に乗ってきたが、この曲で外車に乗せたい」と作曲したが、リズムに慣れるまで苦労したという(「時代の証言者」島倉千代子ロングインタビュー/読売新聞社)。
1987年は、島倉にとってつらい年だった。体が不自由だった姉が自死。事務所のトラブルで巨額の借金も背負い、NHK紅白歌合戦への出場を、「落選するかもしれない」というストレスから解放されたいと、前年の30回を区切りに辞退を表明した。だが「人生いろいろ」が翌1988年にかけて大ヒット、累計売り上げ枚数は130万枚にものぼり、紅白にも復帰を果たす。
2009年1月、島倉は青物横丁駅にこっそりメロディーを聴きに行く。「あのう・・私、島倉千代子と申しますが・・・」と居合わせた駅員に声をかけた。案内された下りホームでメロディーを聴きながら、電車に乗り込む人たちの姿をじっと見つめ続けていたという(週刊朝日、2014年2月13日号)。
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