【2019年 焦点】自然災害 観光経済新聞 記者 板津昌義


観光業界で独自の地域支援策検討を

 2018年の観光業界を振り返ると自然災害の影響を大きく受けた1年だったと言えるだろう。2月には「北陸豪雪」、4月9日に「島根県西部地震」、6月18日に「大阪府北部地震」が起きた。特に観光シーズンと重なる7~9月に大きな災害が集中。6月下旬から7月上旬にかけての「平成30年7月豪雨」は西日本を中心に大雨をもたらした。9月の「平成30年台風21号」では関西国際空港が閉鎖に追い込まれ、北海道で初の最大震度7を観測した9月6日の「北海道胆振東部地震」では道内ほぼ全域で停電も発生した。

 観光庁の発表によると7~9月期の日本人の国内延べ旅行者数は宿泊、日帰りの合計が1億6424万人となり、相次ぐ自然災害の影響などで前年同期比13.2%減となった(速報値)。拡大が続く訪日外国人旅行者数の勢いも止め、9月は前年同月比5.3%減の216万人と、13年1月以来、5年8カ月ぶりに前年同月実績を下回った。

 大手旅行会社の販売にも打撃を与えた。自然災害の影響で旅行の取消などが発生し、JTBは18年上期(4~9月)の決算で国内旅行売上高が約100億円減収した。KNT―CTホールディングスも約40億円の影響を受けたという。

 日本は火山列島であり、いつどこで地震や噴火が起きてもおかしくない。温暖化の影響で気候、気象が変化、夏は年々暑くなり、18年の夏は全国各地で40度前後を観測した猛暑だった。今後、地球温暖化がさらに進行すれば、大雨の発生数が増加し、強い台風も増える可能性があるとも言われている。

 もはや自然災害は異常事態ではなく、ある程度起こるとの心構えが必要だ。西日本豪雨では「13府県ふっこう周遊割」、北海道胆振東部地震では「北海道ふっこう割」と政府による観光支援策が打ち出され大きな効果があったが、国の支援に頼るだけ、それを待つだけでいいのか。起きてから策を練るのでは一歩遅れる。風評被害を防止するためにも初動は早ければ早いほどいい。行動計画、組織、資金など観光地域支援の基本的な枠組みを旅行業界、観光業界が事前に持っておくことを検討する時期に来たのではないか。

【板津昌義】

 

 
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